土地購入の流れとは?かかる税金や契約に必要な書類・注意点を解説
土地購入は、人生において大きな買い物の1つです。適切な手続きを踏まえ、必要な準備を整えることで、スムーズに土地購入を進められます。
当記事では、土地購入の一連の流れや注意点を7つのステップで解説するとともに、購入時にかかる税金や契約に必要な書類、押さえておきたいポイントについても紹介します。初めて土地を購入する方でも、この記事を読むことで具体的な流れを把握でき、安心して土地購入を進められるでしょう。
目次
1. 土地購入の流れを7ステップで解説
土地を購入するときはさまざまな手続きが必要です。土地の購入手続きには時間も必要であり、全体で半年~1年程度、売買契約締結から引き渡しまでだけでも2~3か月の期間がかかります。
以下では土地購入の流れを7つのステップに分けて、各手続きでやることやポイントを解説します。
1-1. ステップ1|土地を探す
最初に、購入する土地を探します。自分が家を建てて住みたい地域・場所の条件を複数挙げて、条件をなるべく満たせる土地を探しましょう。
土地探しの方法は、主に以下の3通りがあります。
- 不動産会社に相談する
- ハウスメーカーに相談する
- インターネットや不動産情報誌で土地情報を調べる
いずれの方法を選択する場合でも、希望条件を追い求めすぎないことが大切です。
条件のよい土地は人気が高いため、早めの決断が求められる場合があります。「完全ではなくても、希望条件の多くを満たせる土地」を逃すと、同じくらい条件がよい土地さえもなかなか現れず、土地購入の機会を逃す可能性があります。
土地の希望条件には優先順位を付けるとよいでしょう。優先順位の高い条件をなるべく満たせる土地を探すと、満足度が高い土地を購入できます。
1-2. ステップ2|買付証明書を提出する
購入候補の中から気に入った土地を見つけたら、土地の売主もしくは仲介業者に「買付証明書」を提出します。
買付証明書とは、土地の所有者に対して購入意思を示し、購入交渉のための重要なステップです。購入申込書や買受証明書と呼ばれることもあります。
買付証明書に記載する主な項目は以下の通りです。
- 土地の購入希望価格
- 物件情報
- 引き渡しの予定日
- 手付金、中間金、残代金についての記載
- 支払方法
- 買付証明書の有効期限(一般的に1~2週間が目安)
- 買主についての情報
- 特約などについての記載
なお、買付証明書を提出しても土地を確実に購入できるわけではありません。一般的に購入希望者が多く集まる土地では、購入希望価格が高い申込者が優先的に交渉できる仕組みになっています。
1-3. ステップ3|住宅ローンの仮審査に申し込む
買付証明書の提出後は、売主との購入交渉が始まります。土地購入に必要な資金を調達できるよう、金融機関で住宅ローンの仮審査(事前審査)に申し込みましょう。
住宅ローンの仮審査は、本審査の前に行われる簡易的な審査のことです。申請者の年齢・健康状態・勤続年数といった属性や、年収額・担保評価などの返済にかかわる事項をチェックします。
仮審査は複数の金融機関に申し込んでも問題なく、2~3日程度で審査結果が出ます。
売買契約の前に住宅ローンの仮審査に申し込む理由は、資金調達が可能なことを証明できなければ土地の購入交渉を進められないためです。土地購入をスムーズに進めるには、買付証明書の提出後1~2週間以内に住宅ローンの仮審査を申し込んだほうがよいでしょう。
1-4. ステップ4|重要事項説明を受けて売買契約を結ぶ
住宅ローンの仮審査を通過したら、いよいよ売買契約です。土地売買契約では、契約前に必ず「重要事項説明」を受けます。
重要事項説明とは、売買する物件の状態や権利など契約上重要な事項についての説明です。重要事項説明は必ず宅地建物取引士が行います。
重要事項説明には、不動産取引にかかわる専門用語や法律用語が登場します。理解が不十分なまま契約すると、後々問題が発生する可能性があるため、分からない部分があれば宅地建物取引士に確認しましょう。
重要事項説明を受けて、内容に納得できたら土地売買契約を結びます。
売買契約の締結時には手付金の支払いが必要です。手付金は売買代金の一部として先払いするお金であり、物件価格の5~10%が目安とされています。
1-5. ステップ5|住宅ローンの本審査に申し込む
売買契約を締結後、住宅ローンの本審査に申し込みます。仮審査では複数の金融機関に申し込むことができたものの、本審査は必ず1社のみに申し込みをしましょう。
住宅ローンの本審査では以下の書類を提出します。
- ローン本審査申込書
- 本人確認書類
- 所得を証明できる書類
- 勤続年数が確認できる書類
- 物件情報の書類
- 返済予定明細書
- 重要事項説明書
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書
書類の不備があると審査期間が延びたり、審査に落ちたりする可能性があるため、必要書類を調べてしっかりと準備することが大切です。
また、住宅ローンの本審査は審査基準が厳格で、一般的な金融機関で1~2週間、ネット銀行であれば1週間から10日程度で結果が出るケースが多いです。土地購入のスケジュールを考える際は、本審査にかかる期間を1か月程度で見ておくとよいでしょう。
1-6. ステップ6|金融機関と金消契約を結ぶ
本審査を通過したら、金融機関と金消契約(金銭消費貸借契約)を結びます。
金消契約とは、住宅ローンを借りる消費者と、貸す側の金融機関の間で締結する契約のことです。金消契約の契約書には、以下の事項が記載されています。
- 合意した借入金額や利率、返済期日
- 返済方法
- 連帯保証や抵当権の設定
- 遅延損害金
- 火災保険の加入
- 期限の利益喪失 など
金消契約を結ぶことで、住宅ローンの融資が正式に決定します。
なお、金消契約後にすぐ住宅ローンの融資額が振り込まれるわけではありません。住宅ローンがいつ下りるかは金融機関によって異なるものの、物件の引き渡し時が多い傾向です。
住宅ローンの融資実行前に土地代金を払わなければならない場合は、つなぎ融資などの一時的に借りられる融資を利用します。
1-7. ステップ7|土地の引き渡しと登記手続きを行う
金融機関との金消契約を締結後は、手付金を差し引いた残代金を土地の売主に支払います。残代金は大きな金額であるため、自分の口座から支払うことに不安がある方は、金融機関から売主の口座へと直接振り込んでもらうとよいでしょう。
残代金も含めて土地代金すべての入金を売主が確認したら、土地の引き渡しが行われます。
また、土地の引き渡しと同時に、所有権を移転するための登記手続きも行います。土地の登記手続きは複雑なので、司法書士に依頼することがおすすめです。
2. 土地購入契約に必要な書類
土地購入契約を結ぶときは、売主側・買主側ともに用意しなければならない書類がいくつもあります。
以下では、土地購入契約に必要な書類を売主側・買主側それぞれの立場で分けて解説します。
2-1. 売主側の必要書類
売主側は、自分が土地の正式な所有者であることを証明する書類や、土地の情報・税金関係を説明できる書類を用意します。
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
- 土地測量図、境界確認書
- 登記済権利証
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産評価証明書
- 重要事項説明書
本人確認書類と実印・印鑑証明書は、自分の素性や契約に使用する印鑑の証明に必要です。本人確認書類は住所・氏名・生年月日が確認できる書類を用意し、印鑑証明書は3か月以内に発行したものを使いましょう。
土地測量図、境界確認書は、土地の正確な面積と境界部分の確認に使用します。登記済権利証は、売却する土地の所有者が売主自身であることを証明する書類です。
固定資産税納税通知書は売主側が負担している固定資産税の確認、固定資産評価証明書は移転登記時の登録免許税の計算に使用します。
固定資産税は、引き渡し日の前日までは売主側が負担し、引き渡し日以降は通常買主側が負担することになりますが、契約内容によって異なる場合もあります。固定資産税の日割り計算をするときの金額の根拠として、固定資産税納税通知書が必要です。
2-2. 買主側の必要書類
買主側の必要書類は以下の3点で、売主側と比べると少なくなっています。
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
本人確認書類は、買主の素性を確認するための書類です。運転免許証や健康保険証など、住所・氏名・生年月日が確認できる書類を用意します。
実印・印鑑証明書は、契約書に捺印する印鑑が公的な実印であることを証明するための書類です。印鑑証明書は3か月以内に発行したものを用意してください。
3. 土地購入でかかる諸経費と税金
土地購入時にかかる費用として、以下の8つの諸経費と税金が発生します。
仲介手数料 | 仲介手数料は、不動産会社に土地売買を仲介してもらった際に支払う手数料です。物件価格に応じて最大3.3%が上限となります。 |
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建物解体費 | 建物解体費は、土地上にある建物を取り壊すための費用です。誰が負担するかは、売主か買主のどちらが解体を希望するかで異なります。 |
登記費用 | 登記費用は、所有権を移転する際にかかる費用です。通常、買主が負担し、登録免許税や司法書士の報酬が含まれます。 |
印紙税 | 印紙税は、売買契約書や金銭消費貸借契約書などに課される税金です。契約金額に応じて印紙税額が変わります。 |
登録免許税 | 登録免許税は、登記申請にかかる税金です。通常、土地の固定資産評価額の1.5~2%がかかります。 |
固定資産税 | 固定資産税は、毎年1月1日時点で土地の所有者に課される税金です。土地の引き渡し日までの分を売主、引き渡し日以降を買主が負担するのが一般的です。 |
都市計画税 | 都市計画税は、市街化区域内の土地にかかる税金です。税率は最大0.3%で、固定資産税と同様に日割りで按分されます。 |
不動産取得税 | 不動産取得税は、土地を取得した際に買主が負担する税金です。2027年まで軽減措置があり、固定資産評価額の1/2で計算されます。 |
これらの費用を事前に把握しておくことが、スムーズな土地購入につながります。
土地購入でかかる諸経費や税金のより詳しい内容ついては、以下の記事で解説しています。気になる方は、ぜひ併せてご一読ください。
4. 土地購入で失敗しないために押さえておきたいポイント
購入する土地の条件によっては、基本的な諸経費以外に余計な費用が発生して予算を圧迫するケースがあります。
土地購入で失敗しないためには、土地探しや購入交渉の段階で以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
4-1. 解体費用・地盤改良費の有無を確認しておく
建物がすでに建っている土地を新築用の土地として購入する場合は、既存建物の解体が必要です。建物の解体には解体費用が発生するため、土地の購入価格は解体費用も含めて検討しなければなりません。
また、地盤の状態によっては地盤改良工事も必要となり、地盤改良費が発生する可能性があります。
地盤改良工事とは、地盤調査によって地盤の強度不足が発見されたときに行う、地盤を改良・補強する工事のことです。土地が以下のような状態である場合は、地盤改良工事が必要となります。
- 地盤が軟弱で、建物の重さに耐えられないケース
- 地盤の上に盛土がされているケース
- 土地が埋立地に所在しているケース
- 土地に地盤沈下や液状化の危険性があるケース
解体費用や地盤改良費は建物の規模や立地条件によって異なり、数十万~数百万円かかることもあります。住宅を建てるときに後悔しないために、土地購入の前に解体費用・地盤改良費の有無を確認しておきましょう。
4-2. 接道やインフラ設備が整っているか確認しておく
土地が接道義務を果たしているか、インフラ設備が整っているかの確認も重要です。
接道義務とは、都市計画区域内で建物を建てる場合に、建築基準法上の道路に土地が2メートル以上接していなければならない義務のことです。接道義務は緊急車両の通行確保や、災害時の避難路確保を目的として定められています。
土地が接道義務を満たしていない場合、そのままでは建物を建てられません。道路と敷地の境界線を敷地側に移動させる「セットバック」や、建築基準法第43条但し書きの利用などの工夫が必要です。
なお、土地が都市計画区域外にある場合など、特定の条件を満たしている土地は接道義務の例外となります。
もう1つのインフラ設備とは、ガス・水道といった土地の内部を通るインフラ設備のことです。インフラ設備が土地にない場合は、足りない設備を敷地内に引き込む工事が必要となります。インフラ設備の引き込みは工事費用がかかるだけでなく、住宅の建築工事の遅れにもつながるため、事前に工事が必要かどうかを確認しましょう。
さらに、前面道路の交通量も確認すべき要素です。交通量が多い道路に面している場合、騒音や排気ガスの問題が発生する可能性があり、静かな生活を望む方には適さないことがあります。また、車の出入りがしにくくなるケースも考えられます。特に、お子さんがいる家庭や頻繁に車を利用する場合は注意が必要です。事前に現地を訪れ、朝や夕方などのラッシュ時に交通状況を確認することをおすすめします。
5. 個人間での土地購入は可能?
土地の購入は不動産会社やハウスメーカーだけでなく、個人間でも行えますが、個人間での取引にはリスクが伴います。
一般的な業者との取引は、宅地建物取引業法による制限があります。しかし、個人間での土地購入は業として不動産売買するわけではないため、法律の観点からも問題はありません。
ただし個人間での土地購入の場合も、取引後は宅地建物取引業法に則って、法務局で登記簿の情報を変更する必要があります。
また、土地を不動産相場よりも極端に安く、もしくは高く購入すると、取引が譲与と見なされて贈与税が発生する可能性もあるため注意しましょう。
土地の個人間売買は時間と手間がかかり、売主・買主の双方にリスクが発生する取引方法です。土地の売買ではさまざまなリスクを避けるために、不動産会社などの専門業者に仲介を依頼することが一般的となっています。
6. 土地を個人間で購入する際の流れ
土地を個人間で購入する際は、基本的に以下の流れで進めます。
1 | 条件に合った土地を探す |
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まずは、自分の希望条件に合った土地を探しましょう。「理想の家づくりに十分な広さがある」「生活利便施設が近くにある」「通勤・通学がしやすい」などの条件を設定して、希望条件をなるべく多く満たせる土地を探します。 個人間で購入する場合の土地探しは、不動産情報誌や不動産の個人売買サイトを利用します。 土地探しと並行して、土地売買価格の相場も調査しましょう。購入希望の条件に近い土地がいくらくらいで取引されているかを知ることで、土地購入の資金計画を組み立てられます。 国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」や、不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」を利用すれば土地の取引価格を調べられます。 | |
2 | 土地の所有者に連絡する |
購入したい土地が見つかったら、土地の所有者に連絡します。個人売買では基本的に仲介業者を利用しないため、土地売買に関する連絡・交渉は自分自身で行わなければなりません。 土地の所有者に連絡するときは、まずは丁寧に自己紹介し、購入希望の意思を伝えた上で、次に以下のような土地に関する詳細情報を確認しましょう。
土地の情報を事前確認しておくことで、交渉・購入前のトラブルを防げます。 また、土地の下見も申し入れましょう。情報誌やWebサイトに掲載されている情報が正しいとは限らないため、購入候補の土地は実際に訪れることが大切です。 | |
3 | 価格交渉 |
土地購入の意思が固まったら、土地の所有者と価格交渉を行います。個人間売買では、価格交渉も買主自身・売主自身がしなければなりません。 価格交渉は、まず売主の希望売却価格を確かめてから、買主が値下げ交渉するという流れです。値下げ交渉ができるかどうかは売主次第であり、ほかにも購入希望者がいる場合は値下げ交渉に応じてくれない可能性があります。 極端な値下げ交渉は交渉自体の破綻につながるため、土地価格相場を踏まえて価格交渉に臨むことが大切です。 土地の価格交渉をするときは、土地の状況を利用するという方法があります。古家付き土地の場合に「既存住宅の解体費用分を値下げしてほしい」という交渉が一例です。「土地の条件がもう少しよければ購入する」という雰囲気を見せることで、価格交渉を成功させやすくなるでしょう。 また、金融機関の融資を受けたい場合は、売買契約前までに金融機関の仮審査を受ける必要があります。 | |
4 | 契約 |
交渉がまとまった後は、土地売買契約を結びます。個人間での土地の売買契約に必要な書類は以下の通りです。 ●売主側の必要書類
●買主側の必要書類
個人間の売買では重要事項説明書を作成しないため、契約に伴う重要事項説明はありません。 手付金も必須ではないものの、取引を確定する目的で手付金の支払いを行うケースがあります。 | |
5 | 土地の引き渡し |
売買契約の締結後は、土地の引き渡し日に代金支払いと登記手続きを行います。 売買契約から土地の引き渡しまでには一般的に2~3か月の期間がかかるため、金融機関の融資を受ける場合は本審査や金消契約を引き渡し前に行ってください。 土地代金の支払い方法は契約書に記載があります。金融機関から融資を受けている場合は、該当の金融機関で代金支払いをすることが基本です。 登記手続きでは、買主が所有権移転登記を行います。一方で土地に抵当権が設定されていた場合は、抵当権抹消登記を売主側が行わなければなりません。 登記手続きが済むことで土地の所有権が買主に移り、土地の引き渡しが完了します。 |
なお、土地を個人売買する場合は住宅ローンの利用が難しくなります。住宅ローン審査では、重要事項説明書の提出が求められるためです。
重要事項説明書は宅地建物取引士のみが作成できる書類であり、不動産会社やハウスメーカーが仲介する場合は在籍する宅地建物取引士が作成します。
しかし、土地の個人売買では仲介業者を置かないため重要事項説明書が作成できず、そのままでは住宅ローンを利用できません。土地の購入代金を一括決済するか、以下の方法で住宅ローンもしくは、ほかのローンを利用する必要があります。
- 重要事項説明書の作成だけを依頼できる仲介業者を探す
- 住宅ローンではない通常のローン商品を利用する
仲介業者に重要事項説明書の作成だけを依頼する場合でも、仲介手数料は発生します。もう1つの通常のローン商品は、住宅ローンよりも金利が高いなどのデメリットがある方法です。
土地を個人間で購入すると、土地代金の支払いが大きな負担となる可能性がある点に注意してください。
まとめ
土地購入の流れは複雑で多岐にわたりますが、この記事で解説したステップに沿って進めれば、大きなトラブルを避けられます。特に、購入時にかかる税金や契約に必要な書類を事前に確認しておくことは、手続きがスムーズに進むポイントです。また、土地購入の際は地盤の状態やインフラ設備など、見落としがちな要素も確認しておくと安心です。
アイダ設計の「土地+自由設計注文住宅」では、土地の購入から建築まで一貫して請け負っております。大変で複雑な土地購入もサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。