
建売住宅(分譲住宅)を選ぶと後悔する?後悔しない選び方を解説
建売住宅(分譲住宅)は、土地と建物がセットで販売されているため、比較的リーズナブルにマイホームを手に入れられるという魅力があります。完成済みの住宅を内見して購入できる点も、忙しい人や住宅設計にこだわりがない人にとっては大きなメリットと言えます。
一方で、「思ったより収納が少なかった」「生活動線が不便だった」などの理由で、入居後に後悔するケースもゼロではありません。間取りや設備だけでなく、交通の便や周辺環境、将来の資産価値といった視点も踏まえて選ばないと、住み始めてから不便を感じることになります。
この記事では、建売住宅を選んで後悔しがちな理由や、後悔を回避するための具体的なチェックポイントについて解説します。
目次
1.建売住宅(分譲住宅)とは
建売住宅(分譲住宅)とは、不動産会社などがあらかじめ区画された土地に住宅を建築し、土地と建物をセットで販売する住宅のことです。広い土地を複数に分割し、道路やライフラインを整備した上で住宅を建てるため、一般的には同じような外観や間取りの家が並ぶ住宅地が生まれます。
建売住宅と分譲住宅は、基本的にほぼ同じ意味で使われることが多い一方、販売形式や呼称の違いによって使い分けられる場合もあります。例えば、大規模な区画開発によって一斉に販売されるものを「分譲住宅」、個別に土地を確保して販売されるものを「建売住宅」と呼ぶケースもあります。
ただし、厳密な区分があるわけではないため、当記事では建売住宅と分譲住宅を同じ意味として扱います。
建売住宅は、購入者がすでに完成している住宅を内見しながら選ぶことができる点が特徴です。注文住宅のように設計段階から関わる必要がないため、間取りやデザインに特別なこだわりがない人にとっては、選択や準備にかかる手間が少なく済むというメリットがあります。
また、建売住宅は大量建築によるコスト削減が反映されており、比較的価格が抑えられているところも魅力です。あらかじめ完成した住宅の外観や内装を確認できるため、購入前から生活のイメージを具体的に描きやすく、家具・家電の設置も含めて購入を検討可能です。
1-1.建売住宅(分譲住宅)と注文住宅の違い
建売住宅(分譲住宅)と注文住宅の違いは、簡単に言えば「家を買う」か「家を建てる」かという点にあります。
建売住宅は、不動産会社などがあらかじめ建てた家と土地をセットで販売するものです。すでに完成しているか、設計が決まっている状態で販売されるため、購入者が間取りや設備を自由に変えることは基本的にできません。
一方、注文住宅は、土地を用意した上で、自分の希望に合わせた家をイチから設計して建てる方法です。間取りやデザイン、設備などを自由に決められる反面、完成までに時間がかかり、手続きや打ち合わせも多くなります。
また、注文住宅の場合は、土地の所有方法にも幅があります。すでに所有している土地に建てることもあれば、購入した土地に建てることも可能です。なお、注文住宅向けに販売されている土地には「建築条件付き土地」と「建築条件なし土地」があり、前者は建築会社があらかじめ指定されているため、自由度に一定の制約があります。
2.建売住宅(分譲住宅)は後悔すると言われる理由
建売住宅はコストや手間を抑えてマイホームを取得できる点が魅力ですが、実際に住み始めてから後悔を感じる人もいます。
ただし、購入前に確認しておくべきポイントやチェックの視点を持っておけば、防げる後悔も多くあります。以下では、よく挙げられる後悔の理由と、それぞれの対策方法について解説します。
2-1.生活動線と間取りが合わない
建売住宅はあらかじめ設計された間取りで建築されるため、すべての家族にとって使いやすいとは限りません。「洗濯機とベランダの距離が遠い」「トイレの場所が使いにくい」といった、生活動線の不便さを後悔する声が聞かれることもあります。
生活動線の後悔を防ぐためには、内覧の際に実際の生活をイメージしながら動線を確認することが重要です。家具をどこに置くか、家族はどのように動くか想像しながらチェックすれば、入居後のギャップを減らすことができます。
2-2.夏は暑く冬は寒い物件だった
「冬は寒くて光熱費が高くなった」「夏の2階が暑い」といった不満は、断熱性や気密性の不足によるものです。一部の建売住宅では、コストを抑えるために断熱材の仕様が最低限となっている場合もあります。
断熱・気密不足のリスクを避けるには、物件ごとの断熱等性能等級や、窓がペアガラスになっているか確認するとよいでしょう。加えて、内覧時には外気との温度差を体感し、断熱性能の説明があるかをチェックすることもおすすめです。
2-3.収納スペースが少ない
見た目の広さを重視する建売住宅では、収納スペースが必要最小限となっているケースもあります。入居してから「クローゼットが足りない」「押入れが浅い」などの不満につながることがあります。
対策としては、事前に「何をどこに収納するか」をイメージして、各部屋や玄関、洗面所の収納量をチェックしておくのが重要です。必要に応じて、後から収納家具を設置する余地があるかどうかも見ておくと安心できます。
2-4.オプション費用がかさんで予算オーバーした
建売住宅の価格は「基本仕様」の金額で表示されていることが一般的です。しかし、網戸・カーテンレール・食洗機などがオプション扱いになっている物件もあり、結果的に費用が予定より高くなる場合があります。
契約前に「標準仕様に何が含まれているか」「オプション費用はいくらかかるか」をよく確認することが大切です。
物件ごとにオプション内容は異なるため、複数の物件を比較しながら、総費用で検討すると予算を大幅に超えることを避けやすくなります。
2-5.想定より交通の便がよくなかった
購入前には「駅まで徒歩圏内」と記載されていても、実際に歩いてみると坂道が多かったり、信号や踏切で時間がかかったりして、想定より不便だと感じる場合があります。
また、バスの本数や運行時間、通勤・通学時の混雑状況なども、実際に生活してみないと分からない部分です。
事前に、通勤・通学・買い物のルートを実際に歩いて確認することをおすすめします。パンフレットや不動産情報に記載された「所要時間」や「距離」といった数字上の情報だけでは分からない、実際の生活で感じる利便性について理解しておくのが大切です。
2-6.工事の経過が見られないため質に不安がある
建売住宅はすでに完成しているか、完成間近の状態で販売されることもあり、建築中の様子を確認できないまま契約するケースが一般的です。そのため、「手抜き工事があったのではないか」と不安を感じる人もいます。
こうした不安を和らげるには、第三者によるホームインスペクション(住宅診断)を活用するのが効果的です。住宅の専門家が床下や屋根裏などの見えない部分までチェックしてくれるため、施工の質に問題がないか確認できます。
また、売主や施工会社が提示する住宅性能評価書や施工写真などがあれば、そちらも確認材料になります。
3.注文住宅を選んで後悔するケースもある
注文住宅は、建売住宅と比べて設計から仕様まで自由に決められるという大きな魅力があります。一方で、自由度が高いからこそ、進め方や条件次第では後悔を感じることもあります。
ただし、後悔につながるポイントを事前に把握しておけば、満足度の高い家づくりにつなげることも十分に可能です。以下では、注文住宅で後悔しやすい代表的なケースと対策について紹介します。
3-1.好条件のそろった土地を探すのが難しい
注文住宅を建てるには、まず土地を用意する必要があります。しかし、「駅に近い」「日当たりがよい」「周辺施設が充実している」など、希望の条件をすべて満たす土地を見つけるのは簡単ではありません。
特に人気エリアでは土地の競争率も高く、候補地が見つかっても予算や法的制限、地盤条件などの理由で断念せざるを得ないこともあります。
土地を購入できず、家を建てられないという事態を避けるには、希望条件に優先順位をつけることが重要です。理想をすべて満たす土地を探すのではなく、「譲れない条件」と「妥協できる条件」を決めておくと、土地選びが進めやすくなります。また、土地と建物をセットで提案してくれる建築会社に相談するのもよい手段です。
3-2.建売住宅(分譲住宅)よりはるかに金額が高くなった
注文住宅では、自分の希望に合わせて設備や仕様を決められるため、要望が増えるにつれて費用もかさみやすくなります。思い描いていた理想の家を実現しようとするうちに、オプションや仕様変更が重なり、当初の予算を大幅に超えてしまうことも少なくありません。
無理な資金計画は、入居後の生活に負担を与える原因にもなります。
予算オーバーを防ぐためには、事前に予算の上限を決めておくことが大切です。その上で、「こだわる部分」と「コストを抑える部分」を分けて検討すると、全体のバランスが取りやすくなります。見積もり段階で複数社に相談して相場感を把握することも、有効な対策です。
3-3.完成した家がイメージと違った
壁紙の色味や照明の明るさ、部屋の広さなどは、実物と印象が異なる場合もあります。そのため、デザインや図面でイメージしていた住宅と、完成後の住宅がイメージと違うように感じる人もいます。
特に、細かい部分にまでこだわる人ほど、イメージとのズレが気になってしまうでしょう。
ギャップを減らすためには、可能な限り実物を確認することが重要です。ショールームや同じ仕様で建てた住宅の見学を行うことで、完成イメージがより具体的になります。
3-4.契約から引き渡しまでが長期化しやすい
注文住宅は設計・打ち合わせ・施工といった各工程に時間がかかるため、完成までに1年近くを要する場合もあります。加えて、打ち合わせ内容の変更や工事の遅延が発生すると、さらに引き渡し時期が延びる可能性もゼロではありません。
特に、仮住まいや賃貸住宅からの住み替えを計画している場合は、引っ越しのタイミングがずれてしまうことでスケジュール調整が難しくなるリスクがあると言えます。
いつまでも新居に住めない事態を避けるためには、スケジュールに余裕を持った計画を立てることが大切です。あらかじめ遅延の可能性も想定し、仮住まいの契約期間や引っ越し予定日などを柔軟に調整できるようにしておくと安心です。工事の進捗についても定期的に確認し、不明点があれば早めに相談するよう心がけましょう。
4.建売住宅(分譲住宅)の間取りでチェックしたいポイント
実際に建売住宅(分譲住宅)を選ぶ際は、家族全員にとって住みやすい間取りかどうか、将来にわたって住み続けられるかどうか、入念に確認しましょう。以下では、間取りの具体的なチェックポイントについて解説します。
4-1.水回り
浴室・洗面所・トイレ・キッチンといった水回りは、家族全員が利用する場所です。不便な間取りになっていると、家族がストレスを抱えることになるため、よく相談して決めましょう。
例えば、子育て世帯・夫婦のみの場合、家事の手間を省けるような間取りを探すという選択肢が考えられます。2階に水回りが配置されていて、廊下をまっすぐ歩けばバルコニーに着く間取りなら、洗濯がラクになります。
2世帯で暮らす場合、あるいは中学生・高校生の子供と暮らしている家庭の場合は、トイレ・洗面所・浴室が完全に分かれているタイプの間取りを選ぶと、脱衣スペースもありプライバシーに配慮できるでしょう。ただし、水回りが1か所にまとまっていた方が、配管が短くなり修理・メンテナンスの負担が少なくなるため、他の部屋の配置も含めて検討したいところです。
音の観点からは、洗濯機が動いてもうるさくないかどうか、排水音が家中に響くことはないかどうか確認しましょう。赤ちゃんや小さい子供を寝かしつける場合、お風呂から寝室まで直行できると便利です。
4-2.窓
窓がある場所は、採光や温度管理・風の通りなどを確認する上で重要です。寒い地域なら、リビングに西日が入っても問題ないかもしれませんが、夏場が暑い地域では、日光が室内の温度を上げてしまいます。
暑さに弱い家族がいる場合、西日が入るリビング・部屋があると、体調を崩しやすくなるかもしれません。遮光性の高いカーテン・断熱フィルムなどを使って温度上昇をやわらげる方法もあるものの、できれば家選びの段階から西日が入りにくい物件を選びたいところです。
風通しを考慮するのであれば、建物のそばに窓がない・窓の位置に高低差がある物件を選ぶことで、良い空気の流れが生まれます。吹き抜けから室内を見下ろせる室内窓も人気ですが、寝室・子供部屋に室内窓がある場合、誤って子供が転落してしまう恐れもあるため注意しましょう。
4-3.収納
収納スペースが少ないと、どうしてもモノが目立ってしまうため、収納スペースの多さにも気を配りましょう。一軒家の理想的な収納率は、全体の13%が目安といわれていますが、必要十分な収納が設けられているかどうかは家庭の事情にもよります。
収納スペースは、多すぎると居住スペースが少なくなり、少なすぎると収納用の家具を購入する必要が生じます。現在暮らしている住宅で不足を感じているなら、収納スペースの数や広さにも注目しましょう。
ミニマリストのように、最小限のモノで過ごしたいと考える家族にとっては、収納の多さはかえって宝の持ち腐れとなります。一方で、必要に応じてモノを出し入れし、居住スペースを広々と使いたいと考えているなら、収納は無視できません。
4-4.部屋数
たくさん部屋があると、それだけ複数の用途を想定して暮らせますが、家族の人数や年齢によって必要な部屋数は変わってきます。また、住んでいる間、ずっと同じ家族が・同じ部屋を・同じ目的で使うとは限りません。
例えば、子供が大きくなると、勉強部屋が必要になります。しかし、進学した学校によっては、寮生活をするため早いうちに子供が家を出る可能性もあります。
分譲住宅を購入する際は、その住宅が「可変的」な間取りかどうかを意識すると、将来の引っ越しを想定する必要がなくなります。可動式の間仕切り壁を使って部屋を仕切るなど、家族のライフサイクルによって過ごし方を変えられる家であれば、末永く暮らすことができるでしょう。
5.建売住宅(分譲住宅)の間取りと一緒にチェックしたいポイント
建売住宅(分譲住宅)を選ぶ際は、住宅の立地にも気を配りつつ、最適な間取りを選びたいところです。以下では、分譲住宅で間取りと一緒にチェックしたいポイントについて解説します。
5-1.周辺環境
家族の理想に近い間取りの分譲住宅を見つけられたとしても、それだけで購入を決めてしまうと、後々後悔する可能性があります。例えば、角地の分譲住宅は人気ですが、どの家族にも向いている家とは限りません。
玄関やリビングが道路に面していると、それだけ多くの人の目に映る機会が増えるため、プライバシーを重視する人にとっては落ち着かないでしょう。住宅の長所が短所になる恐れもあるため、実際に住んでみて自分たちが安心できるかどうか、事前に家族で話し合った方が賢明です。
交通の便についても、電車・バス・歩道橋など、安全性と利便性が十分かどうかチェックしましょう。交通量の多い道路に家が面しているなら、道路に面した部屋は子供部屋にしないなど、万一の事故を考えて間取りを検討することが大切です。
5-2.動線
住宅内をどのように移動するのか、そのルートを線で表したものを「動線」といいます。間取りをチェックする際は、それぞれの部屋から機能的に日常生活を送れるかどうか、動線を確認しましょう。
動線は、料理・洗濯・掃除などの家事をする際の「家事動線」と、トイレ・洗面所・浴室などを利用するときの「衛生動線」の2種類が有名です。どちらを優先するのかは、家族構成によっても異なりますが、可能であれば両方に配慮した間取りの家を探したいところです。
例えば、帰宅後すぐにパントリーへアクセスできると、1週間に1度の買い物など「まとめ買い」をした際に、荷物の整理がしやすくなります。シューズボックスや収納スペースなど、本来ならパントリーとして使用することを想定していない空間であっても、分譲住宅の間取りによっては、パントリーとして使った方が家事は楽になるかもしれません。
衛生動線を重視するなら、家族だけでなく来客時のトイレ事情にも目を向けて、1階・2階にトイレがある住宅を探すのも一手です。各部屋からのアクセスが良いなど、トイレが日常的に使いやすい位置に立地している間取りは、家族のストレスを減らすことにつながります。
6.建売住宅(分譲住宅)の選び方
建売住宅(分譲住宅)を選ぶときには、これまで紹介した後悔しやすいポイントや、間取り・周辺環境・動線などのチェックポイントを確認しましょう。
さらに、以下のような点を心掛けると、後悔しない住宅選びが可能です。
6-1.条件に幅を持たせる
イチから間取り・外装を決められる注文住宅と違って、分譲住宅を選ぶ際は、100%理想通りの家が見つかるとは限りません。理想の間取りにこだわるよりも、できるだけ幅を持たせた方が可能性も広がります。
立地やデザインが決まっている分譲住宅において、住宅や環境を変更するのは限界があります。子育てを優先するのか、生活のしやすさを優先するのかなど、それぞれの優先順位に従って判断しましょう。
6-2.将来的な資産価値も考慮して選ぶ
住宅は、購入して終わりではなく、やがて手放すときのことも考えなければなりません。住宅の資産価値が高い状態なら、住宅の売却価格も高まるため、資産価値が大幅に下がらない住宅を選びたいところです。
住宅の性能・立地によって、資産価値も変わってきますが、間取りに関しては「どのような人でも住める」方が買い手もつきやすくなります。できるだけ、可変性・普遍性を備えた住宅を探しましょう。
まとめ
建売住宅(分譲住宅)はコスパがよい一方で、間取りや収納スペース、交通の便などが、実際に住んでからは自分の理想と異なるものだったと感じ、後悔するケースもあります。
建売住宅の間取りは、総じて万人向けのものが多いため、居住者側が住宅に合わせて生活することも求められます。家族がストレスを感じないような間取りを実現しているかどうか、購入前に入念にチェックしましょう。
家族によって住宅に求める機能は異なるため、窓の位置や部屋の数など、気になるポイントを絞って確認することをおすすめします。家の外の環境や動線、資産価値についても考慮することで、最高の買い物につながるでしょう。
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