
土地購入時にローンは利用できる?土地先行融資・つなぎ融資とは
土地のみを購入する場合、基本的に住宅ローンを利用することはできませんが、住宅の建築を前提とした場合には利用できるケースもあります。戸建て住宅を新しく建てる方は、土地購入費用を確保する方法としてローンについて知識を深めておきましょう。
当記事では、土地購入時に利用できる「土地先行融資」や「つなぎ融資」の特徴や、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。また、土地の評価額を左右する要素や、土地購入ローンを利用する際の注意点についても紹介するので、戸建て住宅の建築を検討している方はぜひご覧ください。
目次
1. 土地のみの購入に住宅ローンは利用できる?
土地のみの購入費用に、住宅ローンを利用することは原則できません。
そもそも住宅ローンとは、住宅の建築・購入もしくはリフォームを行うときに、必要資金の確保を目的として利用できるものです。住宅を建てたり購入したりすることが住宅ローンの利用条件となっており、「住宅の建築・購入をせずに土地だけを購入する」という目的では利用できません。
ただし、購入した土地に将来的に住宅を建てる場合には、受けられる融資もあります。
土地の購入代金は高額になることも多いので、住宅を建てる目的でまず土地を購入する方は、土地のみの購入で利用できる融資には何があるかを把握しましょう。
2. 土地購入時に利用できる融資
土地購入時に利用できるローンには、大きく分けて「土地先行融資」と「つなぎ融資」の2種類があります。
2つのローンは融資を受けられるタイミングが異なるため、融資の流れや違いを把握して使い分けましょう。
2-1. 土地先行融資
土地先行融資とは、購入する土地への住宅建築を前提として、土地代金の融資を先行して受けられる住宅ローンです。
土地先行融資を利用する場合は、基本的に下記の流れで申し込みます。
1 | 購入したい土地を決めた後、土地先行融資を申し込む。 |
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2 | 土地先行融資の契約と土地への抵当権設定を行う。 |
3 | 土地の購入時に土地代金の融資を受ける。 |
土地先行融資を利用して土地を購入した後に、住宅部分のローンを申し込みます。住宅部分の着工開始後は着工金ローン融資・上棟金ローン融資・完成金ローン融資という流れで、住宅建築の進行度合いに合わせて分割融資が行われる仕組みです。
なお、土地先行融資は住宅ローンの一部として実行されるため、土地先行融資の実行から住宅部分の着工までの期限が定められています。
また、住宅部分のローン申し込み時には、土地先行融資によって購入した土地を担保に設定します。無担保での借り入れにならず、金利を低く抑えやすい点が特徴です。
2-2. つなぎ融資
つなぎ融資とは、住宅ローンの融資実行より前に必要となる資金を、一時的に融資してもらえるローン商品です。
住宅ローンは「完成した住宅の引き渡し時」に融資が実行されるので、土地代金や着工金は融資額での支払いができないケースがあります。住宅の引き渡し前に発生する支払いに必要な資金を確保することが、つなぎ融資の目的です。
つなぎ融資を利用するときは、基本的に下記の流れで進みます。
1 | 必要な資金を把握して、つなぎ融資を申し込む。 |
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2 | つなぎ融資の契約をする。 |
3 | つなぎ融資による融資を受ける。 |
つなぎ融資を利用するタイミングは、土地の購入時や住宅の建築時が一般的です。
なお、土地先行融資とは異なり、つなぎ融資は基本的に無担保融資である点が特徴です。抵当権設定などの手間がないものの、無担保であるため利息負担が大きくなることに注意してください。
3. 土地先行融資とつなぎ融資はどちらがよい?
土地先行融資とつなぎ融資はそれぞれにメリット・デメリットがあり、一概にどちらがよいとは言えません。
土地購入に利用できるローンを探している方は、以下で紹介する土地先行融資とつなぎ融資のメリット・デメリットを比較して、自分に合っているほうを選びましょう。
3-1. 土地先行融資のメリット・デメリット
住宅ローンの一部である土地先行融資には、下記のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】 |
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【デメリット】 |
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3-2. つなぎ融資のメリット・デメリット
つなぎ融資のメリット・デメリットとしては、下記の内容が挙げられます。
【メリット】 |
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【デメリット】 |
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4. 土地購入ローンの融資額を左右する土地の評価額
土地先行融資・つなぎ融資のどちらを利用する場合であっても、どの程度の融資を受けられるかは土地の評価額によって異なります。
土地購入ローンで融資を受ける際は、土地の評価額がどのように決まるかを知っておきましょう。
ここでは、土地の評価額を決める5つのポイントを解説します。
4-1. 公示地価
公示地価とは、国土交通省が年に1回公表する、全国の標準地における1平方メートルあたりの評価額です。毎年1月1日時点を基準日として3月中旬頃に公表されます。
公示地価で評価額が示される「標準地」とは、土地の利用状況などが平均的な土地のことです。公示地価における標準地は全国の都市計画区域内を対象としていて、地域によっては公示地価による評価額がないケースもあります。
公示地価は不動産鑑定士が2人以上で算定するため信頼性が高く、金融機関が土地評価をする際によく使う評価基準の1つです。気になる標準地の公示地価は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。
4-2. 基準地価
基準地価とは、都道府県が公表する、全国の基準地における1平方メートルあたりの評価額です。毎年7月1日時点を基準日として9月下旬頃に公表されます。
基準地価の対象となる基準地とは、全国に約2万地点がある土地のことです。基準地は標準地と同一の地点もあるものの、都市計画区域外の住宅地や、商業地・工業地・林地なども含まれている点に違いがあります。
基準地価の算定は1人以上の不動産鑑定士が行うもので、信頼性の高さは公示地価と遜色ありません。公示地価の対象ではないエリアの評価額も掲載されており、金融機関が土地の評価額を判定するときによく利用されています。
基準地価を調べるときは、公示地価と同様に国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で検索しましょう。
4-3. 路線価
路線価には、相続税の課税基準に活用される「相続税路線価」と、固定資産税・都市計画税の課税基準に活用される「固定資産税路線価」の2つがあります。金融機関が土地の評価額を判定するときに使うのは固定資産税路線価のほうです。
固定資産税路線価は税計算の上では信頼性が高いものの、公示地価や基準地価よりも評価額は安くなるため、金融機関は参考程度に使っているとされています。
固定資産税路線価を知りたい場合は、一般財団法人 資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」で調べられます。
4-4. 固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、全国の市区町村(東京都23区は東京都)が公表する、固定資産税の課税基準となる評価額です。固定資産税評価額は3年に1回の周期で見直し(評価替え)が行われ、前回の評価替えは2024年度に行われました。
固定資産税評価額は一般的に、公示地価の70%程度になるよう調整されています。公示地価・基準地価よりも評価額が低くなり、評価替えが3年に1回と低頻度であるため、金融機関が土地の評価額の参考とするケースはあまり多くありません。
固定資産税評価額を調べる方法としては、固定資産課税台帳の取得や、固定資産評価証明書の入手などが挙げられます。
4-5. 取引事例
購入する土地の周囲にある土地や、条件が類似する土地における過去の取引事例も、土地の評価額の参考として使われるケースがあります。
取引事例を参考にする場合は、まず類似する土地の取引事例をいくつか調べてから、平均の取引価格を算出します。平均の取引価格に、取引に影響した事情や時代による補正を加えて、土地の評価額を算定するという流れです。
ただし、類似する土地であっても条件がまったく同一というケースはほぼなく、算出した取引価格に加える補正によって価格が大きく変わる点がデメリットです。判定の精度が高くないため、金融機関では参考程度に利用されています。
5. 土地購入でローンを利用するときの注意点
土地購入時にローンを利用する場合は、準備段階でいくつか気を付けないといけないポイントがあります。
最後に、土地購入でローンを利用する方が気を付けたい注意点を4つ解説します。
5-1. ローン返済と賃料の支払いが重なることがある
現在の住居が賃貸住宅である場合、土地購入で利用したローンの返済と、賃料の支払いが重なることがあります。ローン返済と賃料の支払いが重なると、金銭的な負担が大きくなってどちらかの返済に支障をきたす可能性があるでしょう。
ローン返済と賃料の支払いが重なるのは、主に下記のようなケースが考えられます。
- 土地先行融資を利用するケース
- つなぎ融資を利用し、利息部分のみ毎月返済にしているケース
特に土地先行融資は土地の購入時からローン返済が始まるため、賃料の支払いと重なりやすい点に注意してください。建物完成まで、土地融資額の利息だけ(元金据置)返済するローンの商品もあります。
つなぎ融資も利息部分のみを毎月返済にすると、ローン返済のタイミングが毎月の賃料支払いと重なることがあります。
ローン返済と賃料支払いを重ねたくない場合はつなぎ融資を利用し、返済のタイミングを「住宅ローンの実行時」に設定するとよいでしょう。
5-2. ローン申請時に住宅の建設計画を用意しておく
土地先行融資やつなぎ融資のローン審査は、申請者の属性情報を中心に確認する「仮審査」を通過後に、土地情報などを調べる「本審査」に進むという流れで行われます。
本審査では、建築する住宅の詳細が求められるケースが多いので、事前に住宅の建設計画を用意しておきましょう。
本審査で住宅の建設計画が求められる理由は、土地先行融資・つなぎ融資ともに住宅の建築を前提としたローン商品であるためです。住宅の建設計画を用意できないと、住宅を建築する意図があるかどうかの確認ができず、審査に落ちる可能性があります。
住宅の建設計画としては、住宅の図面や見積書が挙げられます。仮の図面であっても建設計画を説明できる資料として認められる場合があり、建築を依頼するハウスメーカーに作成を依頼することがおすすめです。
5-3. 地盤工事やインフラ整備が必要か確認する
購入する土地の状態によっては、住宅を建築する前に地盤工事や、ガス・水道管の引き込みといったインフラ整備が必要になるケースがあります。
地盤工事やインフラ整備には多額の追加費用がかかり、工期も長くなるため、土地選びの段階で地盤工事やインフラ整備が必要かを確認しましょう。
地盤工事の必要性は、ハウスメーカーの担当者に依頼して地盤調査を行うことで確認できます。インフラ整備についても、ハウスメーカーの担当者に土地のインフラ状況を尋ねれば必要かどうかが分かります。
地盤工事やインフラ整備は住宅の建築前に必要な工事であり、土地購入のローンで必要な資金をまとめて借りることがおすすめです。
5-4. 自己資金には余裕を持たせておく
土地購入でローンを利用する場合は、ローン契約に伴う手数料や抵当権設定に伴う登記費用などの諸費用が発生します。土地先行融資では土地購入時からローンの支払いも開始するため、自己資金には余裕を持たせましょう。
土地・建物購入に自己資金がいくら必要かを考えるときは、資金計画を立てることが重要です。
資金計画では、土地・住宅購入資金は全体でいくらくらい必要か、いつ支払いが発生するかを時系列順に書きます。自分の収入と融資希望額、ローン返済額の支払い項目も記入すれば、土地・建物の購入に金銭的な問題がないかを視覚的に分析可能です。
資金計画は土地の購入時だけでなく、住宅の購入時や住宅ローンの返済中にも役立ちます。土地購入で利用するローンで必要な借入額が分かり、余計な利息の発生を防ぐ効果も期待できるでしょう。
まとめ
住宅を建てるための土地の購入時に利用できるローンには、土地先行融資やつなぎ融資などの選択肢があります。
土地先行融資は担保による金利の低さや住宅ローン控除が利用できるといった利点があるものの、手続きの煩雑さや利用可能な金融機関の少なさはデメリットです。一方、つなぎ融資は無担保で利用しやすいものの、金利や諸費用の負担が大きい点に注意しましょう。
土地購入では、自分の資金計画や住宅建築のスケジュールに合った融資を選び、準備を進めることが大切です。融資を受ける際には土地の評価額や地盤工事・インフラ整備の必要性も確認し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
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