親の土地に家を建てるメリット・デメリットとは?税金やローンの注意点
親の土地に家を建てれば、土地代がかからず資金計画を立てやすくなるため、「親の土地で建てようか」と検討する方はいるでしょう。その一方で、「名義はどうする?」「相続でも揉めない?」「税金はかからない?」といった不安や疑問は付き物です。
当記事では、親の土地に家を建てるメリット・デメリット、住宅ローンの注意点、税金の取り扱い、相続トラブルを防ぐ具体策、二世帯住宅の実例を解説します。親の土地を利用する際に決めておくべき要素が明確になれば、安心して家づくりを進められるでしょう。
目次
1.親の土地に家を建てるメリット
親の土地に家を建てる場合、購入費用を抑えられるだけでなく、資金計画上の安心感が得られる点も大きな魅力です。実家が近ければ、育児・介護・急な用事の支え合いがしやすく、生活面での安心にもつながります。ここからは、メリットについて詳しく説明します。
1-1.土地取得にかかる費用を節約できる
親の土地に家を建てる最大の魅力は、土地を新たに購入する必要がないため、家の取得費用を大幅に節約できる点です。都市部の土地であれば、30坪程度でも約1,000万円以上、エリアによっては約2,000~3,000万円かかるケースもめずらしくありません。
土地代の支出が不要になり、その浮いた資金を建物の仕様・耐震・断熱・住宅設備へ回せば、同じ予算でもワンランク上の住まいを実現できる可能性があります。また、土地探しにかかる時間的・精神的な負担が省ける点もメリットです。
1-2.住宅ローンに通りやすくなる
親の土地の上に家を建てる場合、土地購入費用が不要になるため、住宅ローンの借入額を抑えられます。金融機関は審査時に「返済能力」「担保価値」「借入額の妥当性」などを総合的に判断します。
借入額が小さいほど返済が滞るリスクは低いと判断されやすく、結果として住宅ローン審査に通る可能性が高まります。借入額が減って毎月の返済額が減れば、家計への負担も軽くなります。ただし、親の土地がすでに他の借入の担保に入っている場合や、名義・使用形態に問題がある場合は審査に影響するため注意が必要です。
1-3.実家の近くに家を建てる場合はお互いに駆けつけやすい
親の土地に家を建てると実家の近くで暮らすことになり、お互いが困ったときにすぐに駆けつけられる距離感が得られます。たとえば、子育て期には子どもの送迎や一時預かり、夕飯のサポートなど、親から日常的な支えを受けやすく、共働き世帯にとっては大きな安心材料になります。
反対に親の加齢や体調の変化があった際は、子世帯がすぐに対応できるため、介護の初期対応や見守りがしやすい環境になります。普段から顔を合わせることで親子の関係を維持しやすく、精神的な安心感も得られるでしょう。
2.親の土地に家を建てるデメリット
親の土地に家を建てることには経済的な利点がある一方で、所有権や名義の扱い、相続時の不公平感、住宅ローンの担保設定などにより思わぬトラブルが生じるケースもあります。ここからは、建築前に把握しておきたい主なデメリットを紹介します。
2-1.住宅ローンを利用する場合担保が必要になる
住宅ローンを利用する場合、金融機関は土地や新築の建物に抵当権を設定し、担保を求めます。抵当権とは、返済が滞った際に金融機関がその不動産を競売にかけて優先的に返済を受けられる権利です。すでに親の土地に別の抵当権が設定されていると、金融機関が融資額を回収できないリスクが高まるため、審査は非常に厳しくなります。
また、抵当権が設定された土地と建物は、住宅ローン完済まで原則として名義変更ができず、相続発生時にトラブルの原因になるケースもあります。住宅建築を進める前に、土地の担保状況や名義などを確認しておきましょう。
2-2.相続トラブルが起きることがある
親の土地に家を建てると、将来の相続時に兄弟間の不公平感が生じやすく、トラブルに発展する可能性があります。たとえば、相続財産が親の土地だけだった場合、家を建てて住んでいる人以外は土地を相続しても活用できず、代償金の支払いを巡って争いになるケースが典型です。
代償金の金額は土地評価額によって変わるため、金銭準備ができない場合は売却や共有名義化などの選択を迫られることもあります。こうした相続トラブル発生後では調整が難しいため、事前に家族間で十分な合意形成を図ることが大切です。
2-3.親子間でのトラブルが起きる場合もある
親の土地を利用して家を建てる場合、うまくいけば支援を受けられて日々の安心につながりますが、距離が近いからこそ干渉や価値観の違いが表面化しやすく、親子関係や夫婦関係に影響することもあります。
たとえば、敷地内同居などでは「生活の様子が見えすぎて気になる」「子育てや家事に口を出される」といった心理的ストレスが蓄積し、「親の土地を使わなければよかった」と後悔することも考えられます。建築プランに親の意見が入り、思い描いた家にならないと不満が残ることもあるでしょう。親の土地を利用するかどうかは、経済的なメリットだけでなく、生活面・関係性への影響、トラブルリスクも踏まえて冷静に検討する必要があります。
3.【パターン別】親の土地に家を建てるときにかかる税金
親の土地に家を建てるときにかかる税金は、土地を「無償で借りる」「賃料を払って借りる」「贈与を受ける」「二世帯住宅を建てる」などの形態によって異なります。どのパターンに該当するかで課税の有無や負担額が変わるため、事前に仕組みを理解しておきましょう。
3-1.親の土地を無償で借りて家を建てる場合
| 子どもに課される税金 | 相続税(親の死亡時) |
|---|---|
| 親にかかる税金 | なし |
親の土地を無償で借りて家を建てるケースは、税務上「使用貸借」として扱われます。地代や権利金などの金銭の授受がないため、この段階で贈与税や所得税は発生しません。また、親は土地を貸しているだけで収入もないため、親側にも追加で所得税が生じることはありません。
ただし、土地は最終的に親の相続財産に含まれるため、親の死亡時に子どもへ相続税が課税される点には注意が必要です。このケースでは借地権の控除ができず、「自用地」として評価されるため、通常の借地よりも相続税評価が高くなりやすい点が特徴です。なお、相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除以内であれば課税されませんが、課税対象になる場合は税額が増える可能性があります。
3-2.親の土地を有償で借りて家を建てる場合
| 子どもに課される税金 | 相続税(親の死亡時) 贈与税(状況による) |
|---|---|
| 親にかかる税金 | 所得税(地代・権利金収入に対して) |
親の土地に対して権利金や地代を支払って借り、その上に家を建てる場合は「賃貸借・借地権の設定」として扱われます。金銭の授受が発生して正当に対価を支払っているため、この時点で贈与税はかかりません。ただし、権利金を支払わずに「地代だけ」を支払っている場合、その地代が不当に低いと「権利金相当額の贈与」とみなされ、贈与税が課されるケースもあるため注意が必要です。
親は権利金や地代を受け取ることで所得が発生するため、その収入に対して所得税が課されます。一方で、親が亡くなった際は土地は相続財産として扱われるため、子どもに相続税が発生しますが、有償で借りているため借地権が評価上控除され、相続税は無償貸与の場合より低くなるのが一般的です。
3-3.親の土地を贈与されて家を建てる場合
| 子どもに課される税金 | 贈与税 不動産取得税 登録免許税 |
|---|---|
| 親にかかる税金 | 譲渡所得税(有償譲渡の場合) |
親の土地を無償で譲り受ける、または相場より著しく安い価格で譲り受けて家を建てる場合は「贈与」とみなされ、子どもに贈与税が発生します。贈与税は暦年課税制度であれば年間110万円を超えた部分が課税対象となり、相場との差額が大きいほど税負担も増えます。
また、不動産の取得に伴い、不動産取得税(不動産の評価額の3%)や登録免許税(同2%)も子どもに課税されます。一方、親が有償で土地を譲渡した場合、親は譲渡所得税の課税対象です。なお、贈与を受けた土地は相続財産から除かれるため、その後の相続時に相続税申告が必要になることはありませんが、「みなし贈与」と判断される事例も多く、専門家に相談しながら進めることが望まれます。
出典:総務省「不動産取得税」/
3-4.親の土地に二世帯住宅を建てる場合
| 子どもに課される税金 | 相続税(親の死亡時) |
|---|---|
| 親にかかる税金 | なし |
親の土地に二世帯住宅を建てる場合は、土地は親名義のまま、建物を親子の共有名義とするケースが一般的です。この場合、建物の持分割合が実際の資金負担割合と一致していれば「親からの利益供与」とはみなされず、子どもに贈与税が課されることはありません。また、親が地代収入を得るわけではないため、親への所得税や住民税の課税も発生しません。
ただし、親が亡くなると土地は相続財産となり、相続人である子どもに相続税が課税されます。二世帯住宅の場合、同居が前提で面積が330㎡までであれば「小規模宅地等の特例」で80%が減額されるため、相続税額を大幅に抑えられます。二世帯住宅を区分登記にして別々の居住とみなされた場合は特例を使えないケースもあるため、登記方法の選択は慎重に検討しましょう。
4.親の土地に家を建てるときの住宅ローンの注意点
親の土地に家を建てるのに住宅ローンを利用する際、名義や担保設定の扱いが通常と異なるため注意が必要です。抵当権の設定や返済中の名義変更、贈与扱いとなる取引など、ここからは事前に知っておくべきポイントを説明します。
4-1.住宅ローン返済が完了するまで原則名義を変更できない
親の土地を担保にして住宅ローンを借りた場合、その土地や建物には抵当権が設定されるため、住宅ローン完済まで名義変更はできません。途中で「やはり子ども名義にしたい」「相続対策として早めに名義を移したい」と思っても名義変更手続きには大きな制約があります。
そのため、兄弟姉妹がいる家庭では「将来は誰が土地を相続するのか」「代償金をどうするのか」などを事前に話し合わないと、相続時にトラブルに発展する恐れがあります。名義変更をする予定がある場合は、住宅ローンの契約前に済ませておきましょう。
4-2.ローンの返済中に贈与や売買をすると税金が発生する
住宅ローンの返済中でも土地を贈与・売買すれば名義変更は可能ですが、その場合は税負担が発生します。土地を無償または格安で譲り受ければ、子どもに贈与税・不動産取得税・登録免許税が課税されます。有償売買を行えば、親に譲渡所得税もかかります。
税負担を抑える方法としては「相続時精算課税制度」を使う選択肢もあります。しかし、相続時精算課税制度は課税が先延ばしになる仕組みであり、将来相続税額が増える恐れもあるため、安易な名義変更には注意が必要です。
4-3.二世帯住宅なら親子リレーローンも使える
親と同居を前提に二世帯住宅を建てる場合、親子で返済を引き継ぐ「親子リレーローン」を利用できる場合があります。親が高齢で年収要件を満たせない場合でも、子どもの年収を合算できるため、借入可能額の増額や長期の返済期間の設定が可能になる点がメリットです。
一方で、子どもは連帯債務者となるため、途中で別の場所に家を買いたくなっても、新たな住宅ローンを借りられない可能性があります。持分の設定を誤ると「みなし贈与」と判定されたり、将来の相続時に他の相続人との調整が必要になったりする点にも要注意です。
親子リレーローンは返済義務が親子双方に及ぶため、転勤・結婚・介護などの将来の生活変化が起きても、同居を続けて返済を引き継げるのか確認しておきましょう。
5.親の土地に家を建てるときに相続トラブルを防ぐ対策方法
親の土地に家を建てるときは、「将来の遺産相続でトラブルにならない仕組み」を作ることも重要です。相続発生後の調整は難航しやすいため、生前のうちに書面や制度を活用して防止策を講じておきましょう。
5-1.遺言書を書く
親の土地に家を建てた場合、他にも相続人がいれば「土地は誰のものか」「代償金をどう負担するか」を巡って争いになりやすいため、生前に遺言書で意思を示すことが可能です。遺言書があれば遺産分割協議を経ずに手続きが進み、相続人間の調整負担を減らせます。たとえば「長男に不動産、次男に預貯金」と具体的に指定することもできます。
また、付言事項として「このように分けた理由」や家族へのメッセージを書き添えておけば、残される側の感情的な反発を抑えやすくなるでしょう。ただし、遺留分を侵害する内容は無効にはなりませんが、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、その点に配慮した内容とすることが望まれます。
5-2.生前贈与を検討する
親の土地に家を建てるなら、相続トラブル対策として生前贈与で名義を確定する方法も一案です。生前贈与で土地が子どもの名義になれば、住宅ローンの担保設定がしやすく、将来の相続時に「誰の土地なのか」でトラブルになるリスクを低減できます。ただし、贈与には贈与税・不動産取得税・登録免許税などがかかるため、税負担を理解した上で検討しましょう。
贈与方法としては、年間110万円を超える贈与額に累進税率をかけ累進税率を適用する「暦年課税」のほか、贈与額から控除後の残額に一律20%で贈与税をかけて相続時にまとめて精算する「相続時精算課税制度」も利用できます。ただし、一度選択すると暦年課税へ戻れない点には注意しましょう。
5-3.家族信託をする
家族信託は、親が元気なうちに信頼できる家族へ財産の管理・運用・処分の権限を託す契約です。親が判断能力を失っても、受託者である子どもが裁判所の許可なく柔軟に管理できるため、土地の維持・売却・建て替えなども円滑に進められます。したがって、将来の親の認知症リスクや相続トラブルを見据えた事前対策として取り入れる人もいます。
また、信託契約では「亡くなった後に誰へ財産を最終的に承継させるか」まで指定できるため、遺産分割協議を省略でき、相続争いの予防にもつながります。一方で、成年後見制度と異なり自由度が高い分、契約設計を誤ると意図しない結果を招く恐れがあります。家族信託を行う場合は費用がかかりますが、専門家による設計や契約書の作成を検討しましょう。
6.親と同居する複数世帯向け注文住宅を建てた事例
ここでは、実際に建て替えで二世帯住宅を実現した2組の事例を紹介します。
■埼玉県桶川市/N様邸(完全分離型・建て替え)
賃貸から実家の建て替えに切り替え、奥様の希望で二世帯住宅を建てられました。玄関を別々にして鍵も共有しないことで干渉を防ぎ、生活リズムの違いに配慮されています。LDKには家族が顔を合わせやすいリビングイン階段を採用し、子どもが遊べるスペースも確保されています。太陽光発電も導入され、光熱費の節約につながっています。「気を遣う場面はあるものの、両親の存在が身近にある安心感が大きい」と満足されている事例です。
■新潟県新潟市/K様邸(建て替え・1階に親世帯)
両親との同居を検討する中で、老朽化した家のリフォームと建て替えを比較し、費用面から建て替えを選ばれました。将来の生活負担を考えて親世帯の部屋を1階に設け、移動を最小限に抑えています。階段下を収納にするなどデッドスペースも活用し、限られた面積の中でも収納力を高めています。気密・断熱性能が高く、冬は暖かく夏は省エネで快適に過ごせており、「信頼できる営業担当に出会えたことも大きかった」との声をいただいた事例です。
まとめ
親の土地に家を建てることは、経済的なメリットが大きい方法です。一方で、住宅ローン・税金・相続トラブルなど、将来に影響する要素を建築前に整理しておく必要があります。家を建てる前に「誰が土地を持ち」「誰が住み」「将来どう分けるか」を家族で話し合い、合意を取った上で住宅計画を進めるとよいでしょう。
複数世帯向けの計画では、間取りや生活動線の工夫も重要となります。アイダ設計は設計から始まったハウスメーカーで、年間2,000棟を超える実績の中で二世帯・三世帯住宅も多数手がけてまいりました。自由設計かつローコストを両立した「999万円の家」もあり、ご要望に応じた提案力とコスト最適化で、理想と現実の両立を支援いたします。
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