新築一戸建ての補助金の種類について|申請方法や減税制度なども解説
新築一戸建てを建てる際には、さまざまな補助金や減税制度を利用することで、経済的な負担を軽減できます。これらの制度は国や地方自治体によって提供され、住宅の省エネ性能や子育て世帯への支援など、その内容はさまざまです。
当記事では、新築一戸建ての補助金の概要を解説した上で、国が実施している新築一戸建てに利用できる補助金・助成金制度を解説します。さらに新築一戸建てが対象となる減税制度や、補助金を受け取るためのポイント・注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.新築一戸建ての補助金とは?
新築一戸建ての補助金とは、一定の条件に適合した一戸建てを建築する人・補助要件を満たす分譲戸建て住宅の購入者などに対して行う国や地方自治体の経済的な支援です。新築一戸建ての補助金は主に、マイホーム取得時の金銭的な負担を軽減する目的で活用できます。
新築一戸建ての補助金で受けられる支援にはさまざまな種類があり、状況に応じた仕組みや制度の利用が可能です。例えば、2024年8月現在では補助要件を満たす一戸建てを建築する際に建築費用の一部が助成され、所定の設備を設置する場合にはインセンティブも提供されます。
自治体の補助金の内容は、地域ごとに異なることが一般的です。地域活性化対策や少子化対策の一環として、移住者のみを対象とした補助金としている自治体も少なくありません。一方で国の補助金は、全国の人が同一条件で利用できます。新築一戸建てを取得する際には補助金のほか、さまざまな減税制度を活用するとより金銭的な負担の軽減が可能です。
補助金や減税制度を有効に活用してマイホームの取得コストを下げれば、ほかの用途に資金を回せます。一戸建ての建築・購入には多くのコストがかかるからこそ補助金・減税制度について正しく理解した上で資金計画を立て、理想に近い家づくりを実現しましょう。
2.国が実施している新築一戸建てに利用できる補助金・助成金
2024年8月現在、国では一戸建ての省エネ化や子育て世帯の住宅取得を応援するため、さまざまな補助金・助成金事業を実施しています。ここからは具体例として、子育てエコホーム支援事業や給湯省エネ2024事業などの概要を確認しましょう。
2-1.子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯が認定長期優良住宅(認定住宅)もしくはZEH(ゼッチ)水準住宅を新築・購入する際に、40万円~100万円が支給されます。
子育てエコホーム支援事業では、補助金の申請を工務店やハウスメーカーなどのエコホーム支援事業者が行い、建築主に還元します。建築主のエコホーム支援事業者への問い合わせから還元までの主な流れは、以下の通りです。
1 | エコホーム支援事業者へ問い合わせ |
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エコホーム支援事業者を探して問い合わせ、建築プランを相談します。 | |
2 | 工事請負契約の締結~着工 |
工事請負契約・共同事業実施規約を締結し、着工日を迎えてください。 | |
3 | 交付申請・審査~完了報告 |
エコホーム支援事業者が補助金を申請して工事を実施し、完了報告を行います。 | |
4 | 実績報告~建築費の精算 |
エコホーム支援事業者が実績報告後に補助金を受領し、建築費から差し引く形で還元します。 |
2024年度の子育てエコホーム支援事業の交付申請期間は、2024年4月2日から予算上限に達するまでです。2024年12月31日をすぎると、予算上限に達していない場合も、交付申請はできません。
2-2.給湯省エネ2024事業
給湯省エネ2024事業は、一戸建ての建築や既存住宅のリフォーム工事などに合わせて高効率給湯器を設置する場合、補助金が支給される事業です。具体的には「ヒートポンプ給湯機」「電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機」「家庭用燃料電池」が補助対象設備で、最大20万円が支給されます。
給湯省エネ2024事業の交付申請も給湯省エネ事業者が行うため、建築主の事務手続きは不要です。以下は、給湯省エネ事業者への問い合わせから補助金が還元されるまでの流れを示します。
1 | 給湯省エネ支援事業者に問い合わせ |
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給湯省エネ支援事業者に問い合わせ、建築プランを相談します。 | |
2 | 工事請負契約などの締結~着工 |
給湯省エネ支援事業者と工事請負契約・共同事業実施規約を締結し、着工してもらいます。 | |
3 | 工事完了~審査 |
工事を完了して建築主へ引き渡した後に給湯省エネ支援事業者が交付申請し、審査を受けます。 | |
4 | 実績報告~補助金の還元 |
給湯省エネ支援事業者が実績を報告して補助金を受領し、建築主に還元します。 |
上記は、一戸建ての建築時に給湯省エネ2024事業を利用する場合の流れです。対象設備付住宅を購入する場合は、不動産売買契約と合わせて共同事業実施規約を締結します。
出典:経済産業省「事業概要」
2-3.ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業は、ZEH・ZEH+などを建築・購入する人に補助金を支給する事業です。ZEHに対しては1住戸につき原則55万円、ZEH+に対しては1住戸につき原則100万円の補助金が支給されます。
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業を活用したい場合には、ZEH補助事業の登録を受けている「ZEHビルダー」に相談しましょう。以下は、ZEHビルダーと工事請負契約を締結してから補助金を受け取るまでの流れです。
1 | 工事請負契約を締結し、ZEHビルダーが交付申請書を作成・提出する |
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2 | ZEHビルダーが事業採択の決定を受け、ZEH・ZEH+などを建築する |
3 | 完成後にZEHビルダーが完了実績を報告し、審査を受ける |
4 | 補助金が入金される |
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業には、蓄電システムなどを設置すると補助金が加算される仕組みもあるため、ZEHビルダーと相談して導入を検討しましょう。
出典:ZEH Web「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業」
2-4.地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、地域の工務店やハウスメーカーがグループを形成して行う、省エネ性能や耐久性の高い家づくりを応援する事業です。子育て世帯もしくは若者夫婦世帯がグループ所属業者に補助要件を満たす木造住宅の建築を依頼した場合、最大140万円が支給されます。
地域型住宅グリーン化事業の事務手続きはグループ所属業者が以下の手順で行い、支給された補助金の全額を建築主へ還元するルールです。
1 | 所定の期限までに交付申請して、着工する |
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2 | 木造住宅を建築する |
3 | 木造住宅の完成・建築費用の精算後、完了実績を報告する |
4 | 補助金の支給を受ける |
上記はすべて、2023年度に公募された地域型住宅グリーン化事業の情報にあたります。2024年8月現在、上記の内容による補助金の申請は締め切られているため、注意してください。
出典:国土交通省「令和5年度 地域型住宅グリーン化事業(認定長期優良住宅、ZEH・Nearly ZEH、認定低炭素住宅、ZEH Oriented)」
2-5.LCCM住宅整備推進事業
LCCM住宅整備推進事業とは、先進的な脱炭素化住宅「LCCM住宅」を建築する際に最大140万円の補助金を支給する事業です。2024年度LCCM住宅整備推進事業の交付申請は2024年8月7日が期限であるため、制度の概要を理解し、今後の動向をチェックしましょう。
LCCM住宅整備推進事業の補助金は事業者が以下の手順で申請・受領し、建築主へ還元します。
1 | 環境共生住宅推進協議会へ交付を申請する |
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2 | 交付決定通知を受領し、LCCM住宅を建築する |
3 | 建築工事の完了後、完了実績を報告する |
4 | 完了実績の報告をもとに補助金額が決定される |
5 | 補助金の支給を受ける |
LCCM住宅には、断熱性が非常に高く光熱費を削減しやすいメリットがあります。ただし、間取りや屋根の形状の選択肢が限定されやすいデメリットもあることから、よく考えて選択しましょう。
出典:一般社団法人 環境共生まちづくり協会「LCCM住宅整備推進事業」
出典:一般社団法人 環境共生まちづくり協会「LCCM住宅整備推進事業 概要」
出典:一般社団法人 環境共生まちづくり協会「LCCM住宅整備推進事業 申請・様式」
子育てエコホームと給湯省エネについて詳しくはこちらをご覧ください。
2-6.自治体による補助金制度
一部の自治体では以下の補助金事業・制度によって、一戸建てを取得する人の支援を行います。
【東京都】東京ゼロエミ住宅導入促進事業 | 東京都内に「東京ゼロエミ住宅」を建築する場合、最大240万円(2024年9月末までは最大210万円)を助成 |
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【秦野市】はだの丹沢ライフ応援事業 | 神奈川県秦野市外から転入する人もしくは市内の若者世帯が一戸建てを取得する際、最大60万円を助成 |
【有田町】定住奨励金制度(新築住宅購入支援) | 佐賀県有田町外から転入し、5年以上居住する意思のある人が一戸建てを取得する際、最大100万円を助成 |
【静岡県】住んでよし しずおか木の家推進事業 | 静岡県内で「しずおか優良木材」などを使用した住宅を取得する際、最大30万円を助成 |
上記はすべて2024年8月現在、申請を受け付けている補助金です。最新の情報は、自治体のホームページなどを確認してください。
出典:東京都「東京ゼロエミ住宅が変わります!(令和6年10月1日施行予定)」
3.新築一戸建てが対象となる減税制度
新築一戸建ての取得時には印紙税、不動産取得税、登録免許税がかかりますが、それぞれに軽減措置が用意されています。新築一戸建ての取得時には所得税や固定資産税の軽減措置を受けられるケースもあるため、概要を理解しておきましょう。
3-1.住宅ローン減税
住宅ローン減税とは、住宅ローンを利用して新築一戸建てを取得した場合に、最長13年間、年末ローン残高の一定割合を所得税などから控除する制度です。住宅ローン控除の対象になる年末ローン残高の限度額は、新築一戸建ての住宅性能に応じて変化します。
認定長期優良住宅 認定低炭素住宅 | 4,500万円 |
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ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 0円 |
省エネ基準に適合しない「その他の住宅」については、2024年1月以降、住宅ローン控除を利用できなくなりました。今後、住宅ローン減税を利用するためには、住宅性能評価書や住宅省エネルギー性能証明書などが確定申告の際に必要になる点にも注意しましょう。
出典:国土交通省「2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で住宅ローン減税を受けるためには省エネ性能が必須となります」
3-2.固定資産税の軽減措置
2026年3月31日までに新築した住宅の固定資産税は、一般の住宅の場合には3年間・認定長期優良住宅の場合は5年間、固定資産税が2分の1に減額されます。また認定長期優良住宅で3階建以上の耐火・準耐火建築物の場合は7年間、固定資産税の減額を受けることが可能です。
固定資産税の軽減措置を利用するためには、主に以下の条件を満たす必要があります。
- 居住部分の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
- 居住部分の床面積が全体の2分の1以上
居住部分が120平方メートル以上の新築一戸建てでは、120平方メートルまでの部分に対する固定資産税が減額の対象です。土砂災害特別警戒区域などの区域内で市町村長が行った勧告に従わないで新築された一戸建ては、減額を受けられません。
3-3.住宅取得資金等の贈与税の軽減
2024年1月1日から2026年3月31日までに父母や祖父母などの直系尊属から居住用住宅の取得資金の贈与を受けた場合、以下の金額まで贈与税がかかりません。
質の高い住宅 | 1,000万円 |
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一般住宅 | 500万円 |
質の高い住宅とは、以下のいずれかに該当する住宅です。
- ① 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること。
- ② 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。
- ③ 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。
引用:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」引用日2024/08/01
贈与税の軽減を受けるためには、年齢基準を満たす必要があります。贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上に達していない場合、贈与税の軽減を受けられません。
3-4.印紙税の特例措置
一戸建てを建築する際には、事業者と工事請負契約を締結します。2027年3月31日までに100万円を超える建設工事に関する工事請負契約書を作成する場合は最大50%、印紙税の軽減を受けることが可能です。以下は印紙税の軽減を受けた場合、工事請負契約書に関してかかる印紙税の金額を示します。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
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1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
印紙税の特例措置を利用するために、特別な事務手続きを行う必要はありません。印紙税の特例措置を利用する場合、新築一戸建ての工事請負契約書には、上記の金額に沿った収入印紙を貼り付けましょう。
3-5.不動産取得税の軽減
土地を購入して一戸建てを建築する際には、土地と建物に関する不動産取得税を支払うことが必要です。不動産取得税の計算は以下のようになります。
不動産取得税=課税標準(固定資産税評価額)×税率
一戸建てを新築する場合、建物部分の固定資産税評価額から1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)が軽減されます。土地部分の不動産取得税は、以下の式で計算を行うことが可能です。
土地の不動産取得税=((土地の固定資産税評価額×1/2)×3%)–軽減額
軽減額は以下のうち、いずれか高いほうを採用します。
- (1)4万5,000円
- (2)(土地1㎡あたりの固定資産税評価額×1/2)×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×住宅の持分×3%
建物や土地の不動産取得税の軽減を受けるためには、それぞれにつき適用条件を満たすことが必要です。例えば、土地を取得した4年後に一戸建てを建築する場合、土地部分に関する軽減を受けられません。
出典:東京都「不動産取得税」
3-6.登録免許税の軽減
新築一戸建てを取得する場合、土地の売買や建物の登記に関する登録免許税には、一定の軽減措置が適用されます。2026年3月31日までに土地の売買に関する所有権の移転登記を行う場合には、以下の軽減措置を受けることが可能です。
本則税率 | 特例税率 |
---|---|
2.0% | 1.5% |
建物に関しては2027年3月31日まで、以下の税率軽減を受けられます。
本則税率 | 特例税率 | |
---|---|---|
所有権の保存登記 | 0.4% | 0.15%(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅は0.1%) |
所有権の移転登記 | 2.0% | 0.3%(認定長期優良住宅は0.2%) |
抵当権の設定登記 | 0.4% | 0.1% |
登録免許税の軽減を受けるためには、登記申請する際に自治体で交付された証明書を添付する必要があります。新築一戸建ての取得から1年以内に登記申請しなければ、軽減を受けられないことにも注意しましょう。
4.補助金を受け取るためのポイント・注意点
新築一戸建ての補助金を受け取るためには、所得水準や住宅性能などの基準を満たす必要があります。以下のポイントを意識し、新築一戸建ての補助金を有効に活用しましょう。
4-1.所得制限とその他のポイント
新築一戸建ての補助金には、それぞれ固有の補助要件が設定されています。世帯年収が一定以上の人は利用できない補助金や減税制度もあるため、事前によく確認しましょう。
国が実施する新築一戸建ての補助金には多くの場合、住宅の省エネ性能や導入設備の要件も詳細に規定されています。所定の認定や登録を受けている事業者と契約しないと利用できない補助金も多いため、問い合わせの段階で確認し、ミスマッチを回避してください。
4-2.申請手続きの流れ
新築一戸建ての補助金には、それぞれ申請期限や予算上限が設定されています。申請期限の到来前に予算上限に達すると申請できず、補助金を利用できません。補助金を利用する前提で資金計画を立てた場合にはなるべく早く工務店やハウスメーカーに問い合わせし、計画を進めましょう。
新築一戸建ての補助金を利用する際には、以下のポイントにも注意する必要があります。
- 不正や虚偽申告を行わない
- 計画的に必要書類を準備する
- 国の補助金は原則的に併用できない
もしも不正行為や虚偽申告によって補助金を受領した場合には、返還を求められるのは当然ですし、犯罪となりますのでご注意ください。国の補助金は工務店やハウスメーカー主導で事務手続きを行うケースが多いものの、自分自身も内容や要件を把握した上、適正に利用しましょう。
また国の補助金は原則、併用ができません。利用できる補助金が複数ある場合には「いずれが得か」を考えて、取捨選択する必要があります。一方で自治体の補助金と国の補助金とでは併用が認められる可能性もあるため、事前によく確認して有効に活用しましょう。
まとめ
新築一戸建ての取得には多額の費用がかかるため、補助金や減税制度を賢く利用することが大切です。国や地方自治体が提供する補助金は、省エネ性能を高めるための設備導入や、子育て世帯を支援するものが多くあります。減税制度も併用すれば、より一層の経済的負担軽減が期待できます。
各補助金や減税制度の条件や申請方法を事前に確認し、適切に利用することで、理想の住まいを手に入れましょう。これから新築一戸建ての取得を考えている方は、ぜひ当記事を参考にしてください。