無理のない住宅ローンの返済計画の立て方や返済額の目安を解説
人生で一番高い買い物といわれる住宅購入。住宅ローンを組むときは現実的な返済額の目安をつけておかないと、せっかくのマイホームを手放したり、老後に苦労したりすることになりかねません。
これまでに住宅ローンを組んだ人は、どのくらいの返済額に設定して、何年くらいで返しているのでしょうか?
今回は、複数の指標から見た住宅ローン返済額の目安や、返済計画を立てる時の注意点などを紹介します。最適な住宅ローンの返済計画を立てる参考になるので、ぜひ最後までご覧ください。
住宅ローンの返済額の目安
住宅ローンを組むときは、自分の条件に見合う一般的な返済額の目安を知っておくと安心です。
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住宅ローンの年間返済額は世帯収入の15~20%が目安
住宅ローンの年間返済額は世帯収入の20%以下であれば、ゆとりのある暮らしができるといわれています。
国土交通省 住宅局が発表した「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、住宅ローンの返済負担率は、約15~20%となっています。
<住宅ローンの返済額と返済負担率>
年間返済額 | 月間返済額 | 返済負担率 | |
注文住宅 | 139.4万円 | 11.6万円 | 18.1% |
分譲住宅 | 126.0万円 | 10.5万円 | 19.8% |
分譲マンション | 150.4万円 | 12.5万円 | 18.1% |
中古戸建住宅 | 99.7万円 | 8.3万円 | 16.8% |
中古マンション | 101.3万円 | 8.4万円 | 14.2% |
※国土交通省住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」のデータを基に作成
注文住宅や分譲住宅の種類に関係なく、多くの人が返済負担率20%以下で住宅ローンを組んでいると分かります。
住宅ローンの総支払額は購入資金の65~80%が目安
住宅ローンの総支払額は、購入資金の約65~80%が目安といえるでしょう。注文住宅や分譲マンションなど、どの種類の住宅を購入するにしても、全額を住宅ローンで支払うのではなく、800~1,000万円前後の自己資金を用意している人が多いようです。
<初めて住宅を購入する場合の借入金比率>
購入資金 | 借入金 | 自己資金 | 借入金比率 | |
注文住宅 | 4,879万円 | 4,036万円 | 843万円 | 82.7% |
分譲住宅 | 4,205万円 | 3,406万円 | 799万円 | 81.0% |
分譲マンション | 4,674万円 | 3,337万円 | 1,337万円 | 71.4% |
中古戸建住宅 | 2,721万円 | 1,926万円 | 795万円 | 70.8% |
中古マンション | 3,118万円 | 1,986万円 | 1,132万円 | 63.7% |
購入時に自己資金の割合が多いほど住宅ローンの返済額を抑えられるため、後々余裕のある生活が送れます。
住宅ローンの返済期間は30~35年が目安
注文住宅や分譲住宅(マンションを含む)などを新築で購入する場合の返済期間は30~35年が目安です。中古の戸建てやマンションであれば、少し短い29年が平均となっています。
<住宅ローンの平均返済期間>
返済期間 | |
注文住宅(建築) | 32.9年 |
注文住宅(土地) | 34.2年 |
分譲住宅 | 34.1年 |
分譲マンション | 32.0年 |
中古戸建住宅 | 29.2年 |
中古マンション | 29.9年 |
※国土交通省住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」のデータを基に作成
返済期間を長くするほど月々の負担は減りますが、借入時の年齢も考慮して決めることが大切です。
例えば、40歳のときに30年ローンで購入して60歳で定年を迎えた場合、まだ10年の返済が残っています。収入が激減する老後に多くの返済が残ってしまうと生活に支障が出かねません。
老後に返済が残るように組むとしても、繰り上げ返済などを利用して、なるべく早く完済するようにしましょう。
住宅ローンの返済計画を立てる時の注意点
住宅ローンは数千万円単位の資金を借り入れる契約をするため、慎重に検討する必要があります。ここでは、住宅ローンの返済計画を立てる時の注意点を解説します。
金利プランは自分に合ったものを見極める
住宅ローンの金利プランは「変動金利」「当初固定金利」「全期間固定金利」の3種類あり、メリット・デメリットが異なります。それぞれの特徴を見極めて自分に合ったプランを選びましょう。
借入先は金利以外の条件も考慮して選ぶ
住宅ローンの借入先は、民間の金融機関と政府系金融機関である住宅金融支援機構があります。金利の他に審査基準や手数料、借入できる金額もそれぞれ異なるので、複数の金融機関を比較してから選びましょう。
民間ローンはメガバンク・地方銀行・信用金庫・JAバンク・生命保険会社などがあり、それぞれ独自の融資条件やプラン、保証内容を持っているため、たくさんの候補の中から自分に合った返済方法が選べるのが特徴です。
一方、住宅金融支援機構は民間金融機関と提携した「フラット35」を取り扱っています。全期間固定金利のみで変動金利タイプはありませんが、国民生活の安定を目的としているため、民間の金融機関よりも審査に通りやすいのが特徴です。
収支や将来のライフプランを考えて計画を立てる
世帯収入や毎月の支出は、様々な事情で年々変化するものです。今は余裕があっても、車の購入や子どもの入学費用、親の介護や思わぬ医療費など、大きな出費が必要となる時期は必ずきます。
このような出費に備えて住宅ローンの返済計画は、生活全般の出費を考慮して余裕をもつことが大切です。
ボーナス払いによる繰り上げ返済を上手に活用する
住宅ローンは老後を考えるとなるべく早めの返済が安心です。ボーナスが支給されて資金に余裕ができたら、繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済には、次の2種類があります。
・期間短縮型‥‥返済期間を短縮して利息を減らす。毎月の返済額は変わらない。
・返済額軽減型‥‥返済期間は変えずに毎月の返済額を少なくする。利息はあまり変わらない。
今の生活費に余裕がある方はよりお得になる期間短縮型、日々の暮らしに余裕を持ちたい方は毎月の返済が軽くなる返済額軽減型がおすすめです。
繰り上げ返済は、ボーナスなどで一時的に余裕が出た場合に行うものです。早く完済したい気持ちが前に出過ぎて、生活に必要な資金を繰り上げ返済に使わないようにしましょう。
住宅ローン控除も忘れずに
住宅ローン控除とは個人が融資を受けて住宅を購入した際に税金の控除が受けられる制度です。
年末時点の住宅ローン残高の0.7%が、最長で13年間にわたり所得税や住民税から控除されます。条件にもよりますが、最大で30万円以上が年末調整などで戻ってきます。※2023年3月現在
控除額をシミュレーションサイトで計算して、返済プランに反映させましょう。
住宅ローンを返済する上での心構え
住宅ローンは数十年にわたり返済するため、無理のない計画を立てることが大切です。
多くの人のマイホーム購入後の人生には、子どもの教育資金や老後資金などの他にも、病気や会社の倒産など予測不可能な収支の変化が起こります。
どのような事態にも対応できるよう、返済額には余裕を持ち、家計簿を付けて日常の無駄な出費も減らすように心がけましょう。
しかし、さまざまな可能性を考慮して返済計画を立てたとしても、すべてが予想通りには進まないものです。収支の状況が変化したら、柔軟に返済プランを見直すことも重要です。
まとめ
住宅ローンの返済額の目安は、年間返済額は世帯収入の15~20%、総支払額は購入資金の65~80%、返済期間は30~35年が一般的です。
ただし、目安だけを基準に決めるのではなく、自分に合った金利プランや借入先・将来のライフプランなども考慮しましょう。
住宅ローンを組んだ後は、思わぬ支出やライプスタイルの変化に備えて、ボーナスでの繰り上げ返済や住宅ローン控除を利用して、返済が少しでも楽になるように行動することも大切です。収支が変化したら返済プランの見直しも検討しましょう。