
土地の所有権とは?借地権との違いやメリット・デメリットを解説!
「家を建てたい」「不動産投資をしたい」と考えたとき、まず直面するのが「土地の所有権を取得するか、借地権を利用するか」という選択です。土地を購入する場合、所有権であれば自由度が高く資産形成にも有利ですが、その分初期費用や維持費の負担も大きくなります。一方、借地権を活用すればコストを抑えながら利便性の高いエリアに住むことが可能ですが、土地の使用には制限が伴います。
当記事では、土地の所有権とは何かという基礎知識を解説し、借地権との違いやそれぞれのメリット・デメリット、所有権・借地権が適しているケース、取得後の登記手続きのポイントを詳しく紹介します。土地選びの判断材料としてお役立てください。
目次
1. 土地の所有権とは?
土地の所有権とは、民法第206条で定められた「法令の範囲内で自由に使用・収益・処分できる権利」のことを指します。これは、土地という不動産を自分の財産として全面的に管理・活用できる権利です。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
引用:民法 | e-Gov 法令検索「第二百六条」引用日2025/05/19
たとえば、その土地に家を建てて住むこと(使用)、他人に貸して賃料を得ること(収益)、売却すること(処分)などが可能です。土地を所有すれば自分の資産となるため、借地料の支払いや契約更新の手間などはかかりません。ただし、法令によって利用に一定の制限があること、また固定資産税や都市計画税などの維持費が発生する点には留意が必要です。
2. 土地の所有権が制限される法令一覧
土地の所有権は本来自由に使える権利ですが、公共の福祉を守るため、法律によって利用が制限される場合があります。ここでは、所有権を制限する主な法令について紹介します。
2-1. 建築基準法
建築基準法は、建築物の敷地や構造、用途などに関する最低基準を定め、国民の生命や財産を守ることを目的とした法律です。敷地と道路の関係や、建物の用途、建ぺい率・容積率などの制限が設けられており、土地の所有者も建築基準法に従って土地を利用する必要があります。
2-2. 農地法
農地法は、農地を将来にわたって国民のための貴重な資源として守り、食料の安定供給を確保することを目的とした法律です。農地を農地以外に転用したり売買したりする際には、農業委員会の許可が必要であり、土地の所有者本人でも自由に利用できるわけではありません。
2-3. 国土利用計画法
国土利用計画法は、土地利用基本計画の策定や取引の規制を通じて、国土を総合的かつ計画的に活用することを目的とした法律です。土地の不当な価格高騰を防ぐため、一定規模以上の土地取引については都道府県知事への届け出が義務付けられており、必要に応じて売買契約に関する勧告が出されることもあります。
2-4. 都市計画法
都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を目的とし、都市計画の内容や制限などを定めた法律です。土地は用途地域に応じて住居地域・商業地域・工業地域に区分され、それぞれで建物の種類や建ぺい率・容積率・高さ制限などが異なります。土地の所有者は、指定された用途地域のルールに従って土地を利用する必要があります。
2-5. 土地区画整理法
土地区画整理法は、市街地の健全な整備を目的として、土地区画整理事業の施行方法や費用負担などを定めた法律です。整理事業の対象地では土地の資産価値が向上する一方で、事業完了まで所有権が確定しないケースが多く、抵当権を設定できないため住宅ローンの利用が制限されるなど、土地利用に一定の制約が生じます。
2-6. 宅地造成規制法
宅地造成及び特定盛土等規制法は、宅地造成や特定盛土などによる災害の発生を防ぎ、国民の生命や財産を守ることを目的とした法律です。所有する土地が宅地造成工事規制区域内にある場合、切土・盛土などの造成工事を行うには、あらかじめ都道府県知事の許可が必要です。安全な宅地開発のため、土地の利用には一定の制限が課されます。
3. 土地の所有権と借地権の違い
土地の所有権と借地権は異なる性質を持つ権利形態です。一戸建てでは土地を借地権、建物を所有権で取得するケースもあるため、両者の違いや特徴を理解しておきましょう。
3-1. 土地の借地権の特徴
借地権とは、土地の所有者(地主)から土地を借りて、その上に建物を建てられる権利のことです。ただし、土地を「借りている」立場であるため、所有権とは異なり、自由に土地の貸与や売却はできません。
たとえば、自宅を売却したい場合は地主の承諾が必要であり、無断で取引できません。増改築にも地主の同意が求められるケースが多く、承諾料が発生することもあります。なお、借地権では毎月借地料を支払う必要がありますが、土地に関する税金は地主が負担することになります。
3-2. 所有権と借地権の法的な違い
所有権と借地権の法的な違いは、権利の性質にあります。所有権は「物権」の一種で、土地そのものに対する包括的な支配権を持ち、誰に対しても主張できる「対世効」を有します。
一方、借地権には、地上権(物権)と賃借権(債権)の2形態があり、一般的な住宅用地では賃借権で設定されます。所有権は永続的で譲渡や担保設定も自由ですが、借地権は契約期間があり、譲渡や増改築の際には地主の承諾が必要です。
4. 土地の借地権の種類
借地権が設定された土地では、土地と建物の所有者が異なるため権利関係が複雑です。そこで借地借家法では、借地権を3種類に分け、それぞれに異なるルールを定めています。ここからは、借地権の各種類について詳しく説明します。
4-1. 旧借地権
旧借地権は、1992年7月31日以前に契約された借地に適用される旧借地法に基づく借地権です。契約期間は木造建物で20年以上、鉄筋コンクリート造などでは30年以上とされており、更新も可能です。
その当時は借地人保護が重視されていたため、地主は正当な理由がなければ契約更新の拒絶や明け渡し請求ができません。結果として、借地人が長期間にわたり土地を利用できる、借りる側に有利な内容となっています。
4-2. 普通借地権
普通借地権は、1992年8月以降に改正・施行された借地借家法に基づく借地権で、契約期間は30年以上と定められています。旧借地権と異なり建物の構造による期間の差がなく、更新も1回目は20年以上、2回目以降は10年以上です。
地主は正当な理由がない限り更新を拒否できませんが、立ち退き料の支払いなどによって返還請求が可能です。借地人と地主のバランスを図った制度と言えるでしょう。
4-3. 定期借地権
定期借地権は、借地借家法に基づく新たな借地権で、契約期間満了後は原則として土地を更地にして返還する必要があります。契約の更新は原則として認められていません。土地を安心して貸したい地主側のニーズに応えるために創設されました。
種類には、契約期間が50年以上の「一般定期借地権」、10年以上50年未満の「事業用定期借地権」、30年以上の「建物譲渡特約付借地権」があります。いずれも、借地人には建物買取請求権がない点が特徴です。
5. 所有権で土地を購入するメリット・デメリット
所有権で土地を購入することで、法令の範囲内で自由に土地を活用できます。一方で、取得費用や維持費が高くなる点もあるため、メリットとデメリットを把握することが重要です。
5-1. 所有権のメリット
所有権のある土地を購入する最大のメリットは、法令の制限内であれば自由に土地を活用できる点です。建物の建築や増改築、デザインや間取りの自由度が高く、自分のライフスタイルに合った家づくりが可能です。将来的に賃貸に出したり売却したりする際にも制限がなく、柔軟に資産を活用できます。
さらに、借地権とは異なり、借地料や更新料、建物変更に関する承諾料などの支払いが不要なので、長期的に見るとコストを抑えられるでしょう。所有権付きの土地は資産価値が高いことから評価されやすく、住宅ローンの審査にも通りやすくなります。
5-2. 所有権のデメリット
所有権で土地を購入する際のデメリットとして、まず挙げられるのが初期費用の高さです。土地の購入費用に加えて、登記費用や不動産取得税、仲介手数料などの諸費用が発生し、借地権よりも負担が大きくなります。
また、土地を所有している限り、毎年固定資産税や都市計画税の支払い義務が生じます。税額は土地の規模や評価額によって異なるため、購入前に税額を試算すると、維持費に対する資金面での不安を払しょくできるでしょう。
6. 借地権で土地を購入するメリット・デメリット
借地権付き土地(借地権を取得して建物を所有する形)を選ぶ場合、初期費用を抑えられる反面、利用や契約に制限があります。予算やライフスタイルに合うかどうか、メリット・デメリットを確認して判断するとよいでしょう。
6-1. 借地権のメリット
借地権の最大のメリットは、土地の購入費用を大幅に抑えられる点です。同じ立地条件でも、所有権付きの土地より価格が低く設定されるため、予算内で希望のエリアに家を建てたい場合に有効な選択肢となります。
また、土地の所有者ではないため、固定資産税や都市計画税などの納税義務がない点も魅力です。建築費に予算を集中させたい人や、維持費の負担を軽減したい人は、借地権の土地を前向きに検討するとよいでしょう。
6-2. 借地権のデメリット
借地権のデメリットは、土地の利用に多くの制約がある点です。建て替えや増改築、売却、賃貸などを行う際には、土地所有者の承諾が必要となり、自由に活用できるわけではありません。
また、毎月の借地料に加え、契約更新時には更新料が発生します。資産価値は所有権より低く評価されやすく、住宅ローンの審査が通りにくい場合もあります。
7. 所有権で土地を購入したほうがよい場合
所有権で土地を購入したほうがよいケースとしては、自由な家づくりや資産形成を重視したい場合などが挙げられます。ここでは、所有権が適している可能性が高いケースを紹介します。
7-1. 自由度の高い家づくりがしたい
所有権を持っていれば、建築後のライフスタイルの変化に合わせて増改築や敷地の買い増しなども自由に行えます。法令の範囲内であれば、理想の家を建てることも可能です。
将来的に二世帯住宅への変更や、子どもの成長に合わせた間取りの見直しなど、長く快適に暮らせる住まいづくりが実現しやすいのも魅力です。特に、注文住宅を考えている場合は土地の購入者になることを前向きに検討してもよいでしょう。
7-2. 流動性を重視した不動産投資をしたい
不動産投資においては、「売りたいときに売れる」流動性の高さが重要な判断基準になります。所有権の土地は資産価値が高く、金融機関の評価も受けやすいため、購入希望者が住宅ローンを借りやすいのが特徴です。
借地権に比べて出口戦略が取りやすく、売却時の手続きもスムーズなため、投資用物件としての安定感を重視する人には不動産購入がおすすめと言えるでしょう。
7-3. 将来子どもに資産として残したい
相続を見据えて土地を購入するなら、所有権付きの土地が便利です。所有権があれば、契約更新や借地料の支払いなどの手間がなく、相続後も子どもが自由に活用できます。
また、不動産は現物資産としての価値が高く、長期的に安定した資産として継承しやすいのも特徴です。家族に負担をかけずスムーズに引き継げる点で、土地の所有権は相続対策としても優れていると言えるでしょう。
8. 借地権で土地を購入したほうがよい場合
借地権付きの土地を選ぶほうがよいのは、費用を抑えて立地にこだわりたい場合などです。ここでは、借地権付きの土地が適している可能性が高いケースを紹介します。
8-1. 家の予算や立地にこだわりたい
予算に限りがある中で、利便性の高いエリアにマイホームを構えたい人にとって、借地権は魅力的な選択肢の1つです。借地権付き土地は、所有権で購入できる土地と比べて約6~8割の価格で購入できることが多く、固定資産税や都市計画税の支払いも不要です。
その分、建物のグレードアップや設備投資に予算を充てることができます。長期の住宅ローンで比較した場合、所有権よりも総支払額が大幅に抑えられるケースもあるため、立地と予算を両立させたい人に適しているでしょう。
8-2. 不動産投資で高利回りの運用がしたい
初期費用を抑えて高利回りを狙いたい不動産投資家にとっても、借地権付き物件は有力な候補となるでしょう。借地権割合の高いエリアでは、取得価格に対して賃料収入の効率がよく、投資回収スピードが速くなる傾向があります。
たとえば、都心部や駅近など借地権割合が高い地域の物件は、流通量が少なく希少性も高いため、条件のよい物件を取得できれば安定した収益を見込めます。コストを抑えて投資効果を最大化したい場合は、借地権による土地購入を検討するとよいでしょう。
9. 土地の所有権を取得したら登記手続きを行おう
土地の所有権を取得した場合は、名義変更のために所有権移転登記などの不動産登記手続きが必要です。ここでは、登記申請の重要性や相続時の注意点について解説します。
9-1. 登記手続きを行う重要性
登記手続きは、不動産の所有権を正式に第三者に対して主張するために必要です。たとえば、同じ土地が複数の人に譲渡された場合は、登記を先に済ませた人が法的に優先される「対抗力」が働きます。
さらに登記には「権利推定力」や「形式的確定力」という効力もあります。「権利推定力」とは、登記簿に記載された権利が正しいと推定される効力で、万が一登記内容が事実と異なっていても、反証がなければ正当と見なされます。「形式的確定力」は、登記された内容を行政や関係機関が手続き上無視することはできず、たとえその登記が誤りでも、一旦はその記録に基づいて処理されるという性質を持ちます。
「対抗力」「権利推定力」「形式的確定力」の効力があるからこそ、自身の権利を守ることが可能です。反対に言えば、登記をしなければ、売買契約や相続で土地を取得していても、第三者に「自分の土地だ」と主張できないリスクがあります。所有権トラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。したがって、不動産取引や所有権移転があった場合は、速やかに登記手続きを行うことが、自身の権利を確実に保護することにつながります。
9-2. 相続時における登記の注意点
相続によって不動産の所有権を取得した場合は、速やかに相続登記を行う必要があります。2024年4月1日からは、相続登記の申請は義務化されており、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。これを怠ると、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に内容を反映した登記も必要です。義務化以前に相続が発生していた場合でも、登記が未了であれば義務の対象となり、2027年3月31日までに手続きを完了させる必要性が生じます。
登記をしないと不動産の売却や担保設定ができないだけでなく、相続人が亡くなってしまった場合に相続関係が複雑になり、手続きが非常に煩雑になります。権利関係を明確にし、将来的なトラブルを防ぐためにも、土地の相続が発生した際は早めに登記手続きを進めるようにしましょう。
まとめ
土地を取得する際には、「所有権」と「借地権」の違いを理解した上で、自分に合う方法を選ぶことが重要です。所有権には自由度や資産価値の高さという利点がある一方で、費用負担や税金の支払いが発生します。借地権は初期費用を抑えて好立地に住めるメリットがありますが、制約が多く資産価値が低く評価されがちです。
用途や将来設計に応じて、最適な形を選択しましょう。また、土地を取得した後は、登記を通じて法的に権利を保護することが不可欠です。特に相続の場合は、義務化された登記を怠ると過料の対象になるため、早めの対応が求められます。制度や手続きを正しく理解し、安心・安全な土地活用を実現しましょう。希望する土地を見つけたい人は、ぜひアイダ設計の土地情報もご覧ください。
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