売建住宅はトラブルが多い?建築条件付き土地のトラブル事例と対処法
売建住宅は先に土地を買ってから建築工事を始める住宅のことですが、建築工事を請け負う会社はあらかじめ決まっているため、売建住宅の土地は「建築条件付き土地」として販売されます。原則、土地購入者が施工会社を指定することはできません。売建住宅は間取りや仕様にある程度こだわれる一方で注意点も多く、購入にあたっては知識が必要です。
当記事では、売建住宅と建売住宅の違いや、売建住宅の購入に関するトラブル事例、融資方法などを詳しく解説します。トラブルを避けて理想の住まいを実現するためのポイントを理解し、納得のいく家づくりを進めましょう。
目次
1.売建住宅とは?建売住宅と何が違う?
売建住宅とは、土地を売ってから、その土地に建築する住宅のことを指します。購入者が土地を手に入れた後、建物の設計や仕様について施工会社と打ち合わせを行い、好みに合わせたプランで家を建てることが可能です。ただし、売建住宅は土地の契約から一定期間内に指定の施工会社で建築することが求められます。そのため、売建住宅の土地は「建築条件付き土地」と呼ばれ、「土地売買契約」を結んでから3か月以内に「建築請負契約」を締結するのが一般的です。つまり、売建住宅では土地と建物の契約を別々に交わします。
一方で、建売住宅とは土地と建物がセットになっている住宅のことです。販売される建物は建設済みもしくは完成間近であるため、間取りや仕様を変更できる余地はほとんどありませんが、注文住宅に比べて比較的安価になります。また、新築住宅にすぐに入居できる利便性も魅力です。新築建売住宅は土地と建物を一緒に購入するため、契約は「不動産売買契約」の1つで済みます。
売建住宅 | 建売住宅 | |
---|---|---|
契約方法 | 土地と建物を別々に契約する | 土地と建物を一括で契約する |
建物の仕様変更 | 購入者が設計や仕様を調整できる | 基本的に変更できない |
入居までの期間 | 設計・施工期間が必要なため、比較的長くなる | すでに建物が完成している場合は、即入居できる |
施工会社の選択 | 施工会社が指定されるため、原則選べない | 不動産業者が選定した業者で建築済み |
このように、売建住宅と建売住宅は契約面や仕様の自由度、入居までの期間などに大きな違いがあります。売建住宅や建売住宅の詳細は、以下の記事でも解説しています。
2.建築条件付きの売建住宅によくある?トラブル事例
建築条件付きの売建住宅を購入する場合、必ずしもトラブルが発生するわけではありません。しかし、少ないながらも不誠実な業者や契約内容の不備が原因でトラブルに発展するケースも一部には存在します。
ここからは、建築条件付きの売建住宅でよく見られる具体的なトラブル事例や問題点を紹介します。
2-1.実際は建売住宅なのに売建住宅として広告する
一部の業者では、建築条件付き土地と称して広告を出すものの、実際は「建築条件付きの建売住宅です」という言い回しで建売住宅を販売することがあります。建売住宅であればすでに建物は完成しているもしくは完成間近のはずですが、「建築条件付き土地」と広告する手前、その土地にはまだ建物は建っておらず、もちろん建築確認も受けていない状態です。
宅地建物取引業法第33条では建築確認を受けていない建物の広告を禁止しているため、建築確認を受ける前の未完成の住宅を広告することはできません。このように実態と違う広告を出すのは、業者が注目を引いて集客することを優先しているためと考えられます。売建住宅と思っていたのに建売住宅だったとなれば、トラブルに発展する可能性が高くなります。
2-2.契約のまき直しで不当に仲介手数料を支払わされる
売建住宅では、まず土地の売買契約を結んだ後、建物の請負契約を交わすのが一般的です。しかし、売建住宅として広告しながら建売住宅を販売する場合、土地と建物の契約を結び、建築確認を受けてから、土地売買契約書と建築請負契約書を土地付き建物の売買契約書などに差し替える「まき直し」が行われることがあります。これは、土地だけでなく、土地+建物の仲介手数料を請求するためです。
宅地建物取引業法第36条では建築確認を受ける前の住宅の売買契約を禁じており、別の契約に差し替える行為は不適切です。また、土地と建物の請負契約にかかる仲介手数料を合算して請求することも、法定上限額を超えることになるので、宅地建物取引業法違反になり得ます。さらに、本来であれば仲介手数料は建物の売買ではなく、土地の売買の際に発生する費用です。もちろん、すべての業者がこのような手法を取るわけではありませんが、悪質な業者によって仲介手数料の支払いを不当に求められるケースも考えられます。
2-3.フリープランと謳っているのにプランの自由度が低い
広告に「フリープラン」と記載しておきながら、実際は用意された数種類の設計プランから選択するなど、自由に間取りや仕様を変更できない事例も見受けられます。中には、標準仕様を強制されるケースも稀ですが存在します。もちろん、購入者の要望に柔軟に対応してくれる業者もいますが、標準的な間取りや仕様がすでに決まっていることを、土地の購入後に気付くケースは少なくありません。
売建住宅は、建売住宅に比べると設計の自由度が高い点が魅力です。しかし、どこまで対応できるかは施工業者の技術力に左右される部分もあり、フリープランと謳っていたとしても注文住宅のようなオリジナリティを追求できるとは限りません。家づくりに関する細かな希望が通らないことが原因で、トラブルに発展するケースもあります。
2-4.土地と建物を同時契約したために簡単に解約できない
売建住宅は通常土地と建物の契約を別々に行いますが、一部の業者では土地と建物を同時契約させるケースも見受けられます。このような場合、建築プランを練る中でフリープランとほど遠いと判明し、契約の解除を申し出ても、解除条項に当てはまらないとして解約が困難になることがあります。業者が同時契約を結ぶのは契約解除を防ぐだけでなく、打ち合わせや工事の手間を減らすために標準プランで進めたいという思惑もあると考えられます。
また、契約を解除できたとしても、土地売買契約や建物請負契約の締結時に支払った手付金・前払金は返金されない上、違約金を請求される可能性もあります。金銭的な損害を被る恐れがあることから、業者に急かされて土地と建物を同時に契約するのは避けるべきと言えます。
3.建築条件付きの売建住宅に関するトラブルの防止方法
建築条件付きの売建住宅をめぐるトラブルは、事前に条件や契約に関する理解を深めておくと回避できる可能性があります。ここからは、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策を紹介します。
3-1.広告に不適切な表現はないかチェックする
売建住宅を購入する際、まず確認すべきは広告内容です。中には、建築条件があるにもかかわらず、建築条件付き土地であることを一切表示しない広告も存在します。また、建築条件付き土地の場合、以下の要素も広告に必ず表示しなければならないと、「不動産の表示に関する公正競争規約」によってルール化されています。
- 取引の対象が「建築条件付き土地」である旨
- 建築請負契約を締結すべき期限
- 建築請負契約を契約しなかった場合、土地売買契約は白紙解除され、土地の購入者から受け取った金銭はすべて返還する旨
- 間取り図を載せる場合は一例であり、プラン採用の可否は土地の購入者の自由である旨
広告に不適切な表現が使われている場合、勘違いなどでトラブルに発展する可能性があるため、紛らわしい広告表示には注意が必要です。
3-2.仲介手数料が発生するのは土地のみと認識しておく
売建住宅では土地と建物の契約を別々に締結しますが、仲介に関わるのは土地の売買だけなので、建物の請負では仲介手数料は不要です。「建物紹介料」という名目で請求される場合もありますが、売建住宅はそもそも建設会社が指定されていることもあり、仲介手数料に類する費用はかからないとみなされます。
また、仲介手数料の上限は宅地建物取引業法によって以下のように決められています。
- 売買価格が200万円以下:売買価格×5.5%
- 売買価格が201万~400万円以下:売買価格×4.4%
- 売買価格が401万円以上:売買価格×3.3%
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
仲介手数料の金額は土地価格に基づいて算定するものなので、土地に建物の請負代金を含めて仲介手数料を請求することもNGです。
3-3.仕様の制約や設計の自由度を確認する
間取りの変更ができる範囲、外装や内装の選択肢、設備の指定の可否などを、契約前にしっかり確認しましょう。売建住宅は土地を買ってから設計の打ち合わせができますが、どこまで対応できるかは建築業者によります。特に、オリジナリティの高いデザインや、特殊な仕様・部材は、対応不可となる可能性が高いです。
中には、「フリープラン」「自由設計」と謳っていても、間取りや仕様に多くの制約があり、実際は建売住宅とそれほど変わらないことが多いのも事実です。購入契約後に仕様や設計に関するトラブルが起きないよう、制約の有無や設計の自由度のほか、理想の家の実現にあたってオプションや追加料金が発生するかも前もって把握しておきましょう。
3-4.書面の内容を確認・納得してから契約を結ぶ
売買契約書や建築請負契約書には、土地や物件の条件、引き渡しの時期、キャンセル条件などが記載されていますが、この内容に曖昧な点があると後々のトラブルの原因になります。
特に、土地の売買契約書に「建築請負契約を契約しなかった場合は白紙解除できる」旨が明記されているかは必ず確認しましょう。この文面があれば「住宅プランが気に入らない」「予算内に収まらない」などの理由で折り合いが付かなかったり、指定の期間内に建築請負契約を締結できなかったりしても、土地の売買契約を白紙解除できる可能性があります。白紙解除とは、すでに業者に支払った金銭が購入者に返還され、違約金や損害金の支払い義務を負わない解除方法のことです。
契約条件に関して分かりにくい箇所や疑問点がある場合はその場で質問し、クリアにしておきましょう。契約書の理解が難しい場合、弁護士など第三者の専門家に内容を確認してもらうことも安心材料の一つになります。一度契約を締結すると、解約するのは簡単ではありません。売建住宅を買う際は、十分にプランを練った上で納得できる状態になってから契約することが大切です。
4.売建住宅の購入で住宅ローンを借りる際の注意点
売建住宅ではまず土地を買うので、土地の代金を先に支払う必要があります。しかし、住宅ローンは住宅の建築・購入資金として融資されるものであり、土地の購入資金に充てることはできません。そこで選択肢に挙げられるのが「分割融資」と「つなぎ融資」という2種類の融資方法です。
分割融資 | つなぎ融資 | |
---|---|---|
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
ここからは、分割融資とつなぎ融資の特徴、メリット・デメリットを詳しく説明します。
4-1.分割融資を受ける場合のメリット・デメリット
分割融資とは、土地代金と建築費の総額を複数回に分けて融資を受ける方法です。通常、土地購入時に最初の融資を受け、建築が進むに連れて融資を段階的に受け取る形になります。分割で融資が行われるため、土地代金の支払いを含む必要な資金を効率的にカバーできます。なお、最初の融資が実行されると、土地代の返済も始まります。
<メリット>
- 土地代金の支払い時点から住宅ローンで対応できる
- 住宅ローン金利が適用されるため、つなぎ融資よりも金利が低い
- 一定の条件を満たすと、住宅ローン控除を受けられる
<デメリット>
- 金融機関によっては各段階で契約手続きが必要となり、手間がかかる
- 分割ごとに手数料や諸費用がかかるケースもあり、コストが増える場合がある
- 一部の金融機関しか取り扱いがない
4-2.つなぎ融資を受ける場合のメリット・デメリット
つなぎ融資は、建物完成前に発生する土地代金や建築費用を一時的に立て替える方法です。建物が完成し、正式に住宅ローンが実行されるまでの「つなぎ」として利用します。つなぎ融資で借りた資金(元金)は、住宅ローンの融資実行時にまとめて返済します。利子の支払い方法は、「つなぎ融資を借りた時点で全額前払い」「住宅ローンの融資時に元金と一括返済」「住宅ローンの実行前に利子のみ毎月返済」の3パターンがあります。
<メリット>
- 必要なタイミングで資金を確保でき、買い時を逃しにくい
- 土地や建物の担保がなくても借りられる
- 軽減税率の特例で登記費用が割安になる
<デメリット>
- 分割融資に比べて金利が高めの設定になる
- 契約本数がつなぎ融資と住宅ローンの2本になり、それぞれに諸費用がかかる
- 住宅ローンとセットで契約することが多く、利用できる住宅ローンが限られる
5.売建住宅に関してよくある質問
売建住宅は自由度の高い住宅設計が可能で、購入者にとって理想の住まいを実現しやすい選択肢ですが、トラブルや融資以外にも購入前に多くの疑問が寄せられる分野でもあります。
ここからは、売建住宅に関してよくある質問について回答し、購入時の参考になるようポイントを詳しく解説します。
5-1.Q:建築条件を外すことはできる?
A:売建住宅の建築条件を外すことは原則不可能です。建築条件=施工会社が決まっているという条件の下、土地代を安く設定していることが多いため、基本的に条件の変更はできません。特に、統一感のある街並みを押し出している場合、条件外しは難しくなります。
しかし、「1棟建ての土地が長年売れ残っている」「業者側の決算が迫っている」など、タイミングや状況によっては土地代を高くする分、建築条件を外してもらえるかもしれません。しかし、建築条件を外すのは非常に稀です。
5-2.Q:土地の値引き交渉はできる?
A:建築条件付きの土地はそもそも土地代が低く設定されているので、値引き交渉をしても応じてくれない可能性のほうが高いです。しかし、不動産会社の閑散期や決算期、市場の状況や土地の需要・供給のバランスにより、値引きが認められるケースもありますが、値引きが適用されるかどうかはケースバイケースです。交渉の際には、周辺の相場や現状の価格設定を調査しておくとよいでしょう。
また、値引き交渉が成功しても、土地代を安くする分、建物代が高くなる場合もあります。トータルコストが変わらないと交渉の意味がなくなるので、土地と建物の総額を確認します。過度な値引き交渉を行わないこともポイントです。
5-3.Q:売建住宅が向いている人は?
A:注文住宅ほどの予算や手間をかけず、建売住宅よりも自由度のある家づくりを希望する方に向いています。売建住宅はある程度の自由度はありつつ、注文住宅のようにゼロから決める必要はないため、細かな作業を省きたい方におすすめです。
また、土地探しや施工会社探しの時間を省くこともでき、家づくりに時間をかける余裕がない場合にも適しています一般的には土地契約から3か月以内に着工する必要があるので、スピーディーな対応が求められますが、その分新築一戸建てに早く引っ越すことができます。
反対に、家族構成やライフスタイルに合わせた間取り・仕様を検討したい場合、売建住宅が希望するエリアではない場合は、別の選択肢を考える必要があります。
6.土地なしで自由度の高い家を建てたい場合の選択肢
アイダ設計では「土地+自由設計注文住宅」のプランをご用意しております。これは土地探しから設計まで一貫してサポートし、お客様のご要望に応じた理想の住まいを実現するプランです。
アイダ設計の分譲地は建築条件がなく、間取りや内装の仕様はもちろん、外観のデザインも自由です。土地を持っていない方でも、土地と建物の条件を合わせて検討することで、安心して自由度の高い家づくりを進めていただけます。
まとめ
売建住宅は比較的低コストで家づくりができるものの、トラブルを避けるには建築条件や契約内容の確認が欠かせません。また、基本的には建築会社を選べず、業者によっては制約が多いために理想を叶えるのが難しくなる場合もあります。
建築条件のない土地で自由度の高い家づくりをしたい場合は、アイダ設計まで一度ご相談ください。アイダ設計では、建築条件なしの土地に自由な間取り・仕様の家を建てられる「土地+自由設計注文住宅」のプランをご用意しております。