家づくりの意外な盲点? 家のなかの「事故」の予防策
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世界中のどんな場所よりも「安心・安全」な場所で、快適に過ごせるはずの“わが家”。きちんと設計して建てたマイホームだとしても、稀に「事故」が起こってしまいます。
「自宅で起きた事故」といってもあまりピンとこない、想像がつかない……という方も多いのではないでしょうか。
そこで、実際に「自宅」ではどんな事故が発生しているのか、それらの事故を予防する方法はあるのか? また、新築一戸建てを建てるときに準備できる「家のなかの事故防止策」にはどのようなものがあるか? などを紹介。
これから新築一戸建てを計画する方はもちろん、リフォームを検討中の方にも役に立つ「家のなかの事故を予防するための工夫」もお教えします!
家のなかでどんな事故が起こる? その対策は?
実際に家のなかでどのような事故が起こっているか、まずは統計データをもとに確認していきましょう。「新築一戸建てを建てる際にリスクを減らすことができる対策」も併せて紹介します。
厚生労働省が調査・発表している「人口動態統計・家庭における主な不慮の事故による死因別にみた年齢別死亡数(2019年)」によると、家庭内で起こった死亡事故だけでも、1年間で1万3800件もの重大事故が発生しています。
資料出所: 人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡「家庭における主な不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数及び百分率」2019年
家庭内の不慮の事故死因1位:溺死及び溺水
最も多い死亡事故原因は「不慮の溺死及び溺水」で5673件です。年代別に見てみましょう。
- 80歳以上……3167件
- 65~79歳……2143件
- 45~64歳……263件
- 30~44歳……43件
- 15~29歳……31件
- 10~14歳……7件
- 5~9歳……5件
- 1~4歳……11件
- 0歳……3件
その多くは高齢者で占められていますが、比較的年齢が若い方でも数十件発生しています。溺死・溺水のほとんどはお風呂の浴槽内で発生するものです。
入浴中の溺死のきっかけとなるのが、「室内」「脱衣室」「浴室」「浴槽」の温度差が大きいことで血圧が急変化し、意識を失って溺れてしまうことが挙げられます。
浴室と脱衣室の温度差をできるだけ少なくするために、浴室暖房を活用するのは非常に有効です。また、廊下や脱衣室の寒暖差がなくなる全館冷暖房や高気密・高断熱住宅でヒートショックのリスクを下げることができます。
ふらついたときにとっさにつかまったり、滑って転倒し頭を打ったりするのを防ぐために、浴槽周辺に手すりをつけることも事故防止につながります。
家庭内の不慮の事故死因2位:不慮の窒息
次に多い事故は不慮の窒息ですが、この事故原因の多くは食べ物の誤嚥や嘔吐物、痰などによっておこるものがほとんど。年間で3187件もの死亡事故が発生しています。
家庭内の不慮の事故死因3位:転倒・転落・墜落
転倒・転落・墜落ですが、家のなかのどこで事故が発生しているかを見ていきましょう。全体では2394件の死亡事故が発生しています。
- スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒……1444件
- 階段及びステップからの転落及びその上での転倒……388件
- 建物又は建造物からの転落……242件
転倒での死亡事故というと、高所から落ちて頭や全身を強く打つような事故をイメージするかもしれません。しかし、転倒事故の6割が平面で滑ったり、つまずいたりなどがきっかけで発生しています。
たとえば「カーペットや襖の桟などのちょっとした段差」「電化製品のコードに足がひっかかる」「厚くて滑りやすい靴下で滑る」「スリッパに足を取られる」など、日常で誰でも経験したことがあるような“ヒヤリ”とする些細なきっかけが、重大事故につながる可能性があるのです。
- 引き戸を吊り下げ式レールにして段差をなくす
- コンセントの位置を決める際、電化製品からコンセントまでの距離ができるだけ短くなるよう設計する
- クッションフロアやコルクなど、滑りにくく怪我をしにくい床材を使う
- ガラスなど割れて危険な素材の建具・家具の利用を控える
細かな工夫ですが、どれも骨折など大きな怪我を防ぐためにも対策しておきたい項目です。
家庭内の不慮の事故死因4位:煙、火及び火炎
年間813件の死亡事故が発生している火災は、家族全員の生命や身体の被害だけでなく、財産や周囲の住人への被害につながることも。地震や水害対策と同じように、防災の一種として「火災」に対する備えも意識しましょう。
耐用年数の過ぎた古い家電の使用や、掃除のしにくい場所にあるタコ足配線は火災発生リスクにつながります。
使用する家電の数に見合ったコンセント計画はもちろん「埃などが積もらないよう掃除のしやすい場所に設置する」「コンセントカバーを活用する」といった工夫を新築時にぜひ取り入れましょう。
家庭内の不慮の事故死因5位:有害物質
「家庭内の有害物質」とは、換気不足による一酸化炭素中毒や、洗剤の誤った使用による塩素ガス中毒、農薬や洗剤の誤飲などがあります。発生件数は1年で315件です。
誤飲で特に注意したいのが、小さなお子さんや認知症の方がいるご家族です。「洗剤を置く収納棚には簡単なものでいいのでカギを付ける」「子どもの手の届く場所に洗剤や薬品を置かない」などで対策できます。
新しい生活を始めるタイミングで「事故防止」の意識を育てよう
「思っていた以上に家のなかで死亡事故が発生していた!」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。
死亡事故につながるような重大事故の裏側には、もっと多くの事故や、「ヒヤリ・ハッとした」「被害にはつながらなかったがその可能性があった」事故があります。
新築一戸建てを検討する際、地震被害や水害被害から家を守るために工法や設備に投資・工夫される方は少なくありません。しかし家庭内で起こる事故も、あらかじめ対策できることはできるだけ検討したいものですね。
家の構造や設備によって解決することは難しい事故もありますが、「“万が一”の対処法を知っている」また「スムーズに家族や救急などに危機を知らせる」ことができれば、“死亡”という取り返しのつかない事故を避けられるかもしれません。
マイホームは、もっとも安全な場所としてリラックスができる空間を目指しましょう!