一戸建ての固定資産税は平均いくら?計算方法や納付方法を解説
固定資産とは、土地・家屋・償却資産の総称です。毎年1月1日にこれらの固定資産を所有している方は、固定資産税を納めなくてはなりません。固定資産税は、固定資産の価格をもとに算定された税額をその固定資産がある市町村に納める税金のことです。
当記事では、一戸建ての固定資産税は平均いくらかかるのかという点や計算方法のほか、軽減措置に関する内容や納付方法・納税時期などを解説します。併せて固定資産税の納付におすすめの支払い方法も紹介します。
一戸建てを購入した方や初めて固定資産税を支払うという方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 一戸建ての固定資産税は平均いくらかかる?
一戸建ての固定資産税は、10万~15万円が平均と言われています。建物が新築でも中古でも土地固定資産税額は同じです。
固定資産税の標準課税率は、1.4%と定められています。
しかし、実際の税額はさまざまな要素によって変わるため、一戸建ての固定資産税の平均は、あくまで目安としてとらえておく必要があります。
一戸建ての固定資産税額を左右する主な要素は、下記の通りです。
- 居住地域
- 建築資材の種類
- 築年数
所有する建物と土地の広さが同じ場合でも、居住地域や建築資材の種類によって固定資産税額は変わります。
また、築年数が古くなるにつれて減税されるケースが一般的です。木造の場合は、築年数が10年になると税額は1/2程度になります。ただし、固定資産税には下限があり、築年数がどれほど経過しても税額がゼロになることはありません。
固定資産税額は毎年一定というわけではなく、建物の価値や土地の市況の影響を受けて変動する点を理解しておきましょう。
2. 一戸建ての固定資産税を計算する方法
固定資産税は、固定資産税評価額にもとづいて算出されます。建物と土地にはそれぞれ異なる基準が設けられているため、個別に計算して2つを合算する必要があります。
一戸建ての固定資産税がいくら程度なのか知りたい場合は、基本的な仕組みと計算方法を理解するところから始めましょう。
一戸建ての固定資産税を計算する方法を、手順ごとに詳しく解説します。
2-1. 土地と建物それぞれの固定資産税評価額を調べる
一戸建ての固定資産税を計算するために、まず土地と建物それぞれの固定資産税評価額を調べましょう。
すでに居住している建物であれば、自治体が送付する固定資産税納税通知書に固定資産税評価額が記載されています。中古物件を購入予定の場合は、仲介する不動産会社に確認しましょう。
新築の一戸建てを購入予定の場合は、建物完成後に家屋調査を受けなければ正確な固定資産税評価額を知ることはできません。おおよその評価額を知りたい場合は、下記の目安を参考にしましょう。
土地の固定資産税評価額 | 地価公示価格の70%程度 |
---|---|
建物の固定資産税評価額 | 再建築価格の60%程度 |
再建築価格は、同じ建物を再び建てた場合にかかる建築費を意味します。
2-2. 土地と建物の固定資産税評価額に税率を掛け合わせる
土地と建物の固定資産税評価額に税率を掛けて、個別に固定資産税額を算出します。
大まかな固定資産税額の計算式は、「固定資産税評価額×1.4%」です。
出典:柏市「Q&A 土地と家屋の固定資産税・都市計画税は、どのように算出するのですか?」
固定資産税額の具体的な計算例は、下記の通りです。
<土地・建物それぞれの固定資産税評価額の仮定>
- 土地…購入価格3,000万円の70%
- 建物…建築費2,000万円の60%
固定資産税評価額 | 標準課税率 | 固定資産税額 | |
---|---|---|---|
土地 | 2,100万円 | 1.4% | 29万4,000円 |
建物 | 1,200万円 | 16万8,000円 |
ただし、固定資産税は地方税に該当するため、実際の税率は各市区町村によって異なります。
2-3. 建物の固定資産税額に経年減点補正率を掛け合わせる
建物は経年劣化して価値が減少します。正しい固定資産税を求めるために、経年減点補正率を掛けて固定資産税額を計算しましょう。
価値減少の割合を反映させた建物の固定資産税額は、「固定資産税×経年減点補正率」で求められます。
木造建築の一戸建ての主な経年減点補正率は、下記の通りです。
経過年数 | 経年減点補正率 |
---|---|
1年 | 0.80% |
5年 | 0.64% |
10年 | 0.50% |
15年 | 0.37% |
20年 | 0.25% |
27年以上 | 0.20% |
経年減点補正率は、1年ごとに少しずつ減少します。最終的には27年以上の0.20%まで下がり、以降は同じ補正率で計算が必要です。
建物の固定資産税額が16万8,000円で経過年数が10年の場合、「16万8,000円×0.50」で実際の固定資産税額は8万4,000円となります。
2-4. 土地と建物それぞれの固定資産税額を合わせる
一戸建ての固定資産税は、土地と建物それぞれの税額を合算して求めます。
土地の固定資産税額が29万4,000円、建物の固定資産税額が16万8,000円の場合、一戸建てにかかる固定資産税額は46万2,000円です。
土地と建物の固定資産税額を合算し、100円未満の端数が出る場合は切り捨てます。建物が1年以上経過している場合は、経年減点補正率の計算を必ず行った上で固定資産税額を計算しましょう。
3. 一戸建ての固定資産税は軽減措置が適用される
一戸建てを所有する場合、適用条件に該当すれば特例措置により税金の負担が軽くなります。軽減措置は建物と土地にそれぞれ設けられているため、個別に適用条件の確認が必要です。
固定資産税の軽減措置の概要と適用条件、申請方法について詳しく解説します。
3-1. 建物の軽減措置
2024年3月31日までに新築した住宅は、固定資産税の軽減措置の対象です。住宅取得者の初期負担の軽減を目的として実施されています。
建物の軽減措置の概要は、下記の通りです。
住宅 | 課税標準額 |
---|---|
一般住宅 | 固定資産税評価額の1/2が3年間適用 |
長期優良住宅 | 固定資産税評価額×1/2が5年間適用 |
建物の軽減措置は、一般住宅と長期優良住宅でそれぞれ課税標準額が異なります。
長期優良住宅は、耐震や省エネルギー対策などの措置を講じた住宅を示します。一般住宅より長く軽減措置が適用されることが特徴です。いずれも固定資産税評価額が1/2になるため、大きな節税効果が期待できるでしょう。
建物の固定資産税評価額が1,200万円の場合は、「1,200万円×1.4%×1/2」で固定資産税額は8万4,000円となります。
3-2. 土地の軽減措置
住宅が建っている土地は、固定資産税評価額に軽減措置が適用されます。
土地の軽減措置の概要は、下記の通りです。
住宅用地 | 課税標準額 |
---|---|
小規模住宅用地(200平米以下) | 固定資産税評価額×1/6 |
一般住宅用地(200平米以上) | 固定資産税評価額×1/3 |
軽減措置が適用されると、課税標準額は1/6または1/3まで減少するため、固定資産税の負担を大幅に減らせます。ただし、課税標準額は住宅が建っている土地の広さによって異なります。
200平米以下であれば「固定資産税評価額×1/6」で求められますが、200平米以上の場合は200平米以下の分と200平米以上の分を個別に計算して合算が必要です。
土地の所有から住宅が建つまでの期間が年を跨ぐと、軽減措置は適用されないため注意しましょう。
3-3. 軽減措置の適用には申請が必要
固定資産税の軽減措置を希望する場合は、それぞれ申請が必要です。申請には期限があるため、スケジュールに余裕を持って準備を進めましょう。
固定資産税の軽減措置の申請期限は、下記の通りです。
建物の軽減措置 | 新築を建てた翌年の1月31日まで |
---|---|
土地の軽減措置 | 住宅用地に転用した翌年の1月31日まで |
リフォームの場合は、工事終了後3か月以内が申請期限となります。
申請期限をすぎると軽減措置は適用されず、通常通りの固定資産税が発生するため注意しましょう。特に土地の軽減措置には期限がなく、申請すれば長期的な節税効果が得られるので、忘れずに申請することが大切です。
軽減措置の申請を行う場合は、住宅用地等申告書を作成して市区町村の役場へ提出します。長期優良住宅の適用を受けるには、長期優良住宅の認定通知書の写しが必要です。
ただし、土砂災害特別警戒区域に建てた住宅は、軽減措置の適応対象外です。
4. 一戸建ての固定資産税の納付方法と納税時期
一戸建ての固定資産税を滞納すると、数%の延滞金が発生します。できるだけ固定資産税の負担を軽くするためにも、納付方法と納税期限はあらかじめ確認しておきましょう。
一戸建ての固定資産税の納付方法と納税時期を解説します。
4-1. 固定資産税の納付方法
固定資産税は、一括納付または1年分を4回に分けた分割納付のどちらかを選択できます。自分が管理しやすい方法で納付しましょう。一括納付をしたからと言って割引が適用されるわけではありません。
分割納付の納付スケジュールは、4~5月に送付される納税通知書に記載されています。納税通知書が届いてから1期の納税期限までの期間が短い地域もあるため、一戸建ての購入を検討している人は、あらかじめ納付の準備をしておきましょう。
一括納付を選択する場合は、全期用納付書を用いて納税します。中には、4期分の納付書をすべて使用して一括払いとする自治体もあります。
4-2. 固定資産税の納税期限
固定資産税の納税スケジュールは、「4月・7月・12月・翌年2月」「6月・9月・12月・翌年2月」のように自治体によってさまざまです。基本的には、それぞれの月の末日が納付期限となります。
納税期限を過ぎても納付されなかった場合は、市区町村から督促状が送付されます。納税期限を過ぎると、最大で年14.6%の延滞金が発生するため注意が必要です。
固定資産税が支払えない場合は、自治体の窓口へ相談しましょう。やむを得ない事情があれば、分納や徴収猶予の対応を受けられる可能性があります。
5. 一戸建ての固定資産税を支払うならどの方法がおすすめ?
固定資産税の納付方法は、現金払いのほか、口座振替や電子マネーなどさまざまです。詳しい納付方法は、納税通知書に記載されている内容を確認しましょう。
ポイント還元がある支払い方法もあるため、支払い方法の特徴やメリット・デメリットをチェックした上で自分に合った方法を選ぶことがポイントです。
5-1. 現金払い
現金払いは、窓口に納付書を持参して支払う方法です。自宅や職場の近くに対応窓口があれば、スムーズに支払いができます。
現金払いに対応している主な窓口は、次の通りです。
- 市区町村役場
- 金融機関
- 郵便局
- コンビニ
支払いが土日や夜間に限られる人には、24時間営業のコンビニでの支払いがおすすめです。ただし、コンビニで支払う場合の上限額は納付書1枚あたり30万円のため、納付額によってはコンビニ以外の窓口を利用する必要があります。
現金払いの特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | × |
---|---|
決済手数料 | × |
領収書発行 | 〇 |
現金払いでは、領収印を押した領収証書が発行されます。納付を証明する書類となるため、大切に保管しましょう。
5-2. 口座振替
口座振替は、指定した銀行口座から固定資産税が引き落とされる方法です。口座振替の手数料はかかりません。
口座振替依頼書は、納税通知書と一緒に送付されます。口座振替を希望する人は、市区町村役場や金融機関で手続きを行いましょう。
口座振替のタイミングで口座が残高不足だった場合、再振替は行われません。口座振替ができなかった場合は、納付書での支払いが必要です。スムーズに納付できるように、前日までに口座へ入金しておくことが大切です。口座振替の手続きと残高のチェックだけできていれば、固定資産税の支払い忘れを防げます。
口座振替の特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | × |
---|---|
決済手数料 | × |
領収書発行 | × |
口座振替にすると領収書は発行されないため注意しましょう。
5-3. Pay-easy(ペイジー)
Pay-easy(ペイジー)は、ネットバンキングやPay-easy対応のATMから現金またはキャッシュカードで支払う方法です。納付書にPay-easyマークがあれば、自宅や近くの対応ATMから簡単に支払えます。
Pay-easyで支払う際は、納付書に記載されている収納機関番号または納付番号の入力が必要です。お客様番号や入力番号を一定回数間違えると、ロックがかかり一時的に利用できなくなります。再度Pay-easyを操作する場合は、ロックが解除されるまで待ちましょう。
Pay-easyによる支払いの特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | × |
---|---|
決済手数料 | × |
領収書発行 | × |
口座振替と同様に、領収書は発行されません。領収書が必要な場合は、現金払いまたは電子マネー払いを選択しましょう。
5-4. クレジットカード
クレジットカード払いは、専用Webページや外部が運営するWebサイトまたはアプリからクレジットカードで支払う方法です。市区町村役場・金融機関・郵便局・コンビニではクレジットカード払いができません。
クレジットカード払いは分割払いもできるため、支払いのタイミングを分散できる点がメリットです。ただし、利用できるクレジットカードが限定的で、自治体によっては税額の上限が設けられているケースもあります。
クレジットカード払いの特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | 〇 |
---|---|
決済手数料 | 〇 |
領収書発行 | × |
クレジットカード払いにすると、カード会社独自のポイントが付与されます。一方で、決済手数料も発生するため、ポイント還元率と手数料を比較した上で利用を検討しましょう。
5-5. スマホ決済
スマホ決済は、納付書に記載されたバーコードやQRコードを決済アプリで読み取って支払う方法です。決済アプリを利用できるスマホがあれば、自宅で手軽に納付できます。
固定資産税の支払いに利用できる主な決済アプリは、次の通りです。
- PayPay
- LINE Pay
- 楽天ペイ
- au PAY
- d払い
- ファミペイ
決済アプリで納付できるのは、納付書1枚あたり30万円までです。上限金額を超えると納付書にバーコードやQRが記載されないため、スマホ決済を選択できません。
スマホ決済の特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | 〇 |
---|---|
決済手数料 | × |
領収書発行 | × |
スマホ決済は決済手数料がかからず、アプリ会社によってはポイントが貯まります。ポイント還元率はアプリ会社によって異なるものの、0.5~3%のポイントが付与されるケースが多く見られます。
5-6. 電子マネー
電子マネー払いは、電子マネーに必要な金額をチャージして窓口で支払う方法です。
固定資産税の支払いに使える主な電子マネーは、次の通りです。
- nanaco
- WAON
- iD
- Suica
- PASMO
ただし、電子マネーの種類によっては利用できない窓口もあるため、事前に確認しておきましょう。多くの電子マネーはチャージ金額の上限を5万円に設定しており、固定資産税が上限を超える場合は支払いができません。
電子マネー払いの特徴は、下記の通りです。
ポイント付与 | △ |
---|---|
決済手数料 | × |
領収書発行 | 〇 |
電子マネー払いの場合、ポイント付与はありませんが、クレジットカードからチャージする場合はクレジット会社独自のポイントが付与されます。決済手数料がかからないため、クレジットカードからチャージして納付すればお得に支払えます。
まとめ
一戸建てを所有すると、固定資産税の納付が必要です。固定資産税は、一般的に10万~15万円が平均と言われています。実際は、居住地域や建築資材の種類、築年数などによって変動するため覚えておきましょう。
また、適用条件に該当すれば特例措置により固定資産税の負担が軽くなります。一戸建てを購入する前に軽減措置の適用条件も確認しておくのがおすすめです。さらに、支払い方法によっては、決済手数料不要・ポイント付与してもらえる場合もあります。
できるだけお得に納税できる方法をあらかじめ調べておくとよいでしょう。