住宅ローンの審査に通らない理由は?融資を受けるためのコツ
1131 view
マイホームを購入する際、一般的に住宅ローンを利用するケースがほとんどです。実際に申し込みをする場合は、金融機関で審査が行われ、審査に通ると住宅ローンを利用できます。
しかし、住宅ローンは申し込みすれば誰でも通るわけではありません。場合によっては、審査に通らないケースもあります。
当記事では、住宅ローンの審査に通らない理由や、審査に通過するためのコツについて解説します。万が一審査に落ちたら、申し込みを検討すべき住宅ローンについても確認しましょう。
1.住宅ローンの審査に通らない理由
住宅ローンの審査に通らない原因はさまざまある中で、主な理由は個人の返済能力や購入物件価値に関連する問題が挙げられます。例えば、すでに多額の借り入れがある場合や、購入予定の物件の担保評価が低い場合などです。また住宅ローンには事前審査と本審査の2段階があり、事前審査に落ちると本審査には進めません。
住宅ローンの審査に通らない理由として多いのは、下記の10点です。
- 申し込み条件を満たしていない
- すでに多額の借り入れかある
- 短期間に複数社に申し込みした
- 個人信用情報に問題がある
- 申し込み時に虚偽の情報を申告した
- 収入に対して借入希望額が高額すぎる
- 借り入れ・返済実績がない
- 物件の担保評価が低い
- 健康状態に難がある
- 勤務先情報に問題がある
上記のポイントを詳しく知れば、住宅ローンの審査に通るための対策を立てやすくなるでしょう。ここでは、各項目について解説します。
1-1.申し込み条件を満たしていない
金融機関によって詳細は異なるものの、住宅ローンの申し込みにはさまざまな条件が設定されています。多くの金融機関では、完済時の年齢上限や勤続年数・年収・団信生命保険への加入可否などが審査の重要な要素です。
また、個人事業主の場合、収入の安定性も重要な審査ポイントです。3期連続の黒字が金融機関による安定収入の指標とされています。
例として、SBI新生銀行と三菱UFJ銀行が定めている条件を見てみましょう。
【SBI新生銀行】
- 申込時年齢が20歳以上65歳以下、完済時年齢が80歳未満
- 団体信用生命保険へ加入できること
- 前年度税込み年収が300万円以上の正社員もしくは契約社員
- 自営業の場合は業歴2年以上で2年平均300万円以上の所得であること
- 日本国籍、もしくは永住許可を得ている人、永住許可がない場合は配偶者が日本国籍、または永住許可を得ており、かつ配偶者が連帯保証人となること
(引用:SBI新生銀行「住宅ローンには審査基準がある!住宅ローンの審査に影響する項目をチェック」/引用日2023/12/06)
【三菱UFJ銀行】
- 日本国籍の方、または永住許可等を受けている外国人の方
- 年齢が借入時に18歳以上70歳の誕生日まで、完済時に80歳の誕生日までの方
- 団体信用生命保険にご加入が認められる方(保険料は三菱UFJ銀行が負担します)
(引用:三菱UFJ銀行「住宅ローンの審査の流れをわかりやすく解説!注意点と必要書類についても紹介」/引用日2023/12/06)
申し込み先の条件を満たしていない場合、住宅ローンの審査すら行ってもらえないことが一般的です。そのため、事前に融資を希望する金融機関が定める条件を確認し、条件を満たしているかどうかをしっかりと見極めてから申し込みましょう。
1-2.すでに多額の借り入れがある
住宅ローンの審査において、他社からの借り入れが多ければ多いほど審査で不利になる場合があります。借り入れが多いのは、延滞や貸し倒れのリスクが増加するためです。
金融機関は、返済負担率が一定の範囲を超えないように設定しています。返済負担率は年収に対する返済額の割合を指す言葉です。現在の返済比率は、後述する「年収に対する年間返済額の割合」で計算できます。
年間返済額は住宅ローン返済額だけでなく、車のオートローンやクレジットカードのリボ払い、奨学金などのほかのローン残高分も含んだトータルの返済額です。住宅ローンの審査申し込み前にほかのローンを完済することで、返済比率が下がり審査を通る可能性が高まります。
1-3.短期間に複数社に申し込みした
短期間に複数の金融機関に住宅ローンを申し込むと「申し込みブラック」になる場合があります。これは、ローンの申し込みをした時点で、個人信用情報機関に記録が残るためです。金融機関が情報を確認する際、短期間で多くの申し込みがある事実が判明すると、返済能力や信用力に疑問を持つことがあります。
例えば1〜3か月の間に3社以上に申し込んだ場合、6か月間は審査に通りにくくなるケースが大半です。住宅ローンはもちろん、ほかの借入についても審査を通すことが難しくなります。ただし、申し込みブラックは金融事故ではないため、時間が経てば解除されるケースが一般的です。
住宅ローン以外のローンを複数借りて金策をしようと考える方もいますが、上記で解説したように他社借入先が多いと審査に落ちるリスクが上がるためおすすめしません。
1-4.個人信用情報に問題がある
住宅ローン契約において、個人の信用情報はもっとも重要な審査項目です。金融機関は、住宅ローン申し込み時にJICC・CIC・KSCといった指定信用情報機関で、申込者の信用情報を確認します。過去にローンの返済を延滞したり自己破産したりといった経験があると、審査が厳しくなるケースが大半です。
個人信用情報には、ローン商品やクレジットカードの支払い状況だけでなく、スマートフォンの割賦支払いや奨学金の返済状況も含まれます。個人信用情報は個人でも取り寄せが可能なため、不安がある場合は一度自分自身でチェックするとよいでしょう。現在の信用状態を把握すれば、改善策を考えやすくなります。
1-5.申し込み時に虚偽の情報を申告した
各金融機関では、具体的な審査項目を開示していません。しかし、申し込み時の入力項目から、ある程度どのようなことをチェックされているのか予測は可能です。特に審査で重要視される項目は、以下の8つが挙げられるでしょう。
住宅ローン審査でチェックされている可能性が高い項目 |
---|
|
虚偽の申告とは、勤続年数を偽ったり少し金額を多めに書いたり、借り入れ状況を正確に書かなかったりといったことです。
住宅ローンを含むローン商品において、申し込み時の信用性は非常に重要です。申し込み内容が事実と異なったり、事前審査と本審査で提出書類の内容が異なったりすると、信用性を疑われて審査に通りにくくなります。
例えば、年収や勤続年数が異なった場合です。源泉徴収や課税証明書、健康保険証などから確認できた事実と申告内容が異なると、審査が否決される可能性が高まります。派遣社員の場合、勤務先への確認が行われることもあります。
事前審査で証明書類の提出が求められない場合でも、本審査時に提出する証明書類を確認して正しい情報を把握しておきましょう。事前審査時から正確な情報を提供し、本審査で提出する書類の内容と整合性をとることが大事です。
1-6.収入に対して借入希望額が高額すぎる
住宅ローンの審査において、年収に対する借入希望額が大きすぎると、審査に通りにくくなる恐れがあります。借入希望額が増えればその分返済比率が高くなり、返済負担が重くなるためです。
返済比率の計算には住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンといったほかのローンの返済額も含まれます。金融機関は返済比率を重視しており、一般的に望ましいとされる数値は30%以下です。ただし、返済比率の基準は金融機関や住宅ローンの種類によって異なります。
返済比率は、以下の計算式を用いて算出できるため事前に確認しておくとよいでしょう。
返済比率(%)=年間返済額÷年収×100
出典:みずほ銀行「住宅ローンの返済比率の目安は?上限割合や計算方法、注意点」
住宅ローンの借入額を決める際は、日々の生活費や教育資金、老後の資金なども考慮し、無理のない返済計画を立てることが大切です。
1-7.借り入れ・返済実績がない
借り入れや返済実績がまったくないのもマイナス要素であり、住宅ローンの審査に通らない原因の1つです。クレジットカードやローンの利用経験がない人は「スーパーホワイト」と呼ばれ、金融機関からの信用度が低くなる傾向があります。スーパーホワイトの状態は、返済実績が存在しないため、返済能力の有無が確認できないことが主な理由です。
また、自己破産から10年経過すると個人信用情報の傷が消える代わりにスーパーホワイトとなるのも、住宅ローンの審査に通らない理由の1つです。このほか、金融機関が「クレジットカードを作れない理由があるのでは?」と疑いをかけたために審査が通らないというケースもあります。
これまでクレジットカードを一切利用せず、現金主義の生活をしている場合、返済実績を残せていません。銀行の引き落としや請求書払いにしていた家賃や光熱費をクレジットカードなどで支払い、個人信用情報に記録を残すとよいでしょう。
1-8.物件の担保評価が低い
物件の担保価値は、ローン審査における重要な要素です。価値が低い物件では審査落ちとなるか、融資額が減額される可能性が高まります。
住宅ローンの本審査では、購入希望物件に関するさまざまな書類を提出し、担保価値の審査・評価が行われます。万が一、ローンの返済が難しくなった場合、担保物件を売却してローンの未返済分を回収するためです。
この時に、もしも物件の資産価値が低いと、金融機関は融資したお金を取り戻せなくなるかもしれません。物件が売却時に融資額を回収できるだけの価値がないと判断されれば、審査に通りにくくなります。
1-9.健康状態に難がある
住宅ローンの審査には、団信(団体信用生命保険)の加入審査が含まれます。 団信は、ローン契約者が万が一死亡や高度障害になった場合に、住宅ローンの残債を肩代わりする保険です。そのため、多くの金融機関では団信への加入者となることが、住宅ローン契約の条件となっています。
団信への加入には、健康状態の告知が必要です。持病や過去の病歴によっては加入できないこともあります。過去3年間の病歴の告知は義務です。なお、同じ病気であっても治療方法や病状によって審査結果は異なります。持病などがある方は、持病があっても加入しやすい「ワイド団信」や、団信加入が必須でない「フラット35」などの選択肢を検討するのもよいでしょう。
1-10.勤務先情報に問題がある
住宅ローンの審査では、借入希望者の勤務先情報も判断材料です。個人事業主や非正規雇用者など、一般の会社員や公務員と比べて収入の安定性や継続性に不安がある場合、審査に通るのが難しいことがあります。転職したばかりで勤続年数が短い場合や、安定性が低いと見なされる職種に就いている場合も、審査に落ちるケースが少なくありません。
歩合給や年俸制の職種に就いている場合、年収が高くても収入の不安定さが審査に影響を与える可能性があります。また、開業から3年未満の自営業者の場合は特に倒産リスクが高いと見なされ、審査が厳しくなる傾向にあります。確定申告で赤字に調整していると、実際の収入より低く評価されがちになるため注意が必要です。
2.住宅ローンに落ちたら?審査に通るためのコツ
1度住宅ローンの審査に落ちたとしても、まだ融資を受けられる可能性は残っています。まずは現在の状況を冷静に分析し、次のステップを検討することが大切です。例えば、下記のような手段が考えられます。
- 別の金融機関の住宅ローンを検討する
- 現状の個人信用情報を把握する
- 条件を整えてから再審査を申し込む
- 申し込み時は正確な情報を申告する
上記の方法を取り入れれば、住宅ローンの審査に通る可能性を高められるでしょう。ここでは、住宅ローン審査に通るコツを4つ解説します。
2-1.別の金融機関の住宅ローンを検討する
住宅ローンの審査内容や基準は金融機関によって異なります。そのため、A銀行で落ちた場合でも、B銀行なら審査に通る可能性があります。金融機関によっては、勤続年数が短い場合や個人事業主、非正規雇用者、あるいは延滞歴があってもローンを組める場合もあるでしょう。審査に落ちた金融機関以外で目星を付けているところがあるなら、申し込んでみるのも選択肢の1つです。
ただし、短期間に多くの金融機関に申し込むのは避けましょう。申し込み情報は信用情報に記録され、多くの金融機関に申し込んでいるとマイナスイメージを持たれる場合があります。審査基準の異なる金融機関を2〜3社ほど選び、慎重に申し込むことが大切です。
2-2.現状の個人信用情報を把握する
住宅ローンの審査に落ちた理由に心当たりがない場合は、一度個人信用情報を確認してみましょう。個人信用情報には、クレジットカードやローンの申し込み履歴、返済状況などが記録されています。過去に返済の延滞や金融事故があると、審査に通りにくくなります。
個人信用情報は、CICやJICCなどの国が認めた機関に依頼すれば開示が可能です。個人信用情報の事故歴は、通常5年~10年間で抹消されます。直接的に審査を通りやすくする方法ではありませんが、問題がいつの時点で発生したのかを把握すれば、マイホームの購入計画を練り直せるでしょう。
2-3.条件を整えてから再審査を申し込む
住宅ローンの再審査を申し込むのであれば、条件を整えてから挑みましょう。他社からの借り入れがある場合、完済を目指すか、おまとめローンの利用を検討してください。借り入れが多いと返済比率が高くなり、審査に不利になるためです。
転職したばかりで勤続年数が短い場合は、半年〜1年程度同じ職場で働き、勤続年数を延ばしてから申し込み直すのもよいでしょう。この間に貯金をして頭金を増やす方法も有効です。自己資金を増やせば借り入れ金額が少なくなり、返済比率も下がるため審査が通りやすくなります。自己資金は住宅購入資金の1〜2割が一般的な目安です。
また、返済負担率が高い場合、物件価格が年収に見合っていない可能性があります。年収に見合った物件に切り替える方法でも、審査に通る可能性が高まります。
2-4.申し込み時は正確な情報を申告する
住宅ローンの申し込みでは、正確な情報の提供が必須です。年収や勤続年数などの情報を偽ると、信用性に欠ける人物と見なされ、審査に落とされます。金融機関は申込内容に基づいて融資の可否や金利を決定するため、申告内容が事実かどうかを厳しくチェックします。
申込時に虚偽の申告をしても、審査段階で見抜かれるケースが大半です。たとえ審査に通ったとしても、後に虚偽が発覚した場合はローンの契約が解除され、借入金全額の一括返済を求められることもあります。
したがって、住宅ローンの審査を問題なく通すには、申込書類に虚偽の内容を記載することは避けなければなりません。故意でなくても記載情報に間違いがあると、審査に落ちる可能性が高いため、しっかりと内容を確認した上で申し込みましょう。
3.審査に落ちたら申し込みを検討すべき住宅ローン
できる限りの対処法を試してなお、住宅ローンの審査に落ちた場合でも、まだあきらめる必要はありません。特定の条件に合致すれば「ペアローン」「ワイド団信付き住宅ローン」「親子リレーローン」などでローンを組めるかもしれません。
ここでは、各ローンの特徴と適しているケースを解説します。
3-1.ペアローンを組める住宅ローン
ペアローンは、夫婦や親子などでペアを組み、それぞれ主債務者となって住宅ローンを組む方法です。ペアローンの特徴やメリット・デメリット、おすすめできるケースは以下の通りとなります。
【メリット】
- 借入金額を増やせる
- 返済方法や返済期間を個別に設定できる
- 2人とも住宅ローン控除の対象になる
- それぞれが団信に加入できる
- 売却時の特別控除額が増える
【デメリット】
- 事務手数料をはじめとした諸経費が各々必要となる
- 団信では片方のリスクしかカバーされない
- 離婚時や収入減少時にリスクがある
- 贈与税の問題が生じる場合がある
【おすすめできるケース】
- 共働きで収入が安定している場合
- 健康状態に問題がなく、団信に加入できる場合
- 借り入れ額を増やしてより高額な物件を購入したい場合
3-2.ワイド団信付き住宅ローン
ワイド団信付き住宅ローンは、健康上の理由で通常の団信に加入できない方も対象となる、加入条件を緩和した団体信用生命保険が付帯した住宅ローンです。ワイド団信付き住宅ローンの特徴やメリット、デメリット、おすすめできるケースは以下の通りとなります。
【メリット】
- 持病がある方でも加入できる
- 保障内容は一般団信と同等である
- 病気の種類によっては加入しやすい
【デメリット】
- 一般団信よりも金利が高くなる
- 金融機関によっては取り扱いがない
- 病状によっては加入できない
【おすすめできるケース】
- 健康状態への不安や持病によって一般団信に加入できない場合
3-3.親子リレーローンを組める住宅ローン
親子リレーローンは、親と子どもで住宅ローンを組む形式のローンです。先に親が返済し、その後子どもが引き継ぎます。親子リレーローンの特徴やメリット、デメリット、おすすめできるケースは以下の通りとなります。
【メリット】
- 高齢者でも審査に通りやすい
- 子どもへ引き継ぐことで長期での返済が可能となる
- 収入合算でローンの審査に通る可能性が高まる
【デメリット】
- 子どもの経済状況や返済能力が重要視される
- 子どもに滞納履歴がある場合は審査に通りにくい
- 収入合算の条件が金融機関によって異なる
【おすすめできるケース】
- 収入が少ない、または高齢で審査に通りにくい場合
- 子どもが安定した収入を持ち、返済能力がある場合
- 親子で話し合い、将来的な返済計画を立てられる場合
まとめ
住宅ローンの審査に通らない理由としては、すでに多額の借り入れしている場合や、物件の担保評価が低い場合などさまざまです。個人信用情報に事故歴があるケースだけでなく、借り入れ・返済実績が一切ない「スーパーホワイト」の状態でも審査に通らないケースがあります。
万が一、住宅ローンに落ちたら、現状の個人信用情報を把握した上で、借入の返済や勤続年数など条件を整えてから再度申し込みすれば審査に通る可能性を上げられるでしょう。もしくは、ペアローンやワイド団信付き住宅ローン、親子リレーローンといった住宅ローンを検討するのも1つの方法です。
『住宅ローン』関連の気になるコラムをご紹介!
白坂 大介
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士 | 宅地建物取引士 | 住宅ローンアドバイザー | 証券外務員1種
経歴
大阪市東淀川区 出身
上宮高等学校 卒業
京都産業大学 経営学部 卒業
2004年 ハウスメーカーへ入社
2008年 ファイナンシャルプランナー取得
2009年 総合保険代理店へ入社
2010年 FP Office Shirasaka 開業
2013年 ジョインコントラスト株式会社 設立