年収400万円だと住宅ローンはいくらまで借りられる?返済額を解説
年収400万円は、月収(手取り額)に換算すると約25万円前後です。ここから毎月家賃や食費、生活費といった出費に加え、数万円の貯金などをすると手残りはほとんどなくなります。そのため、「住宅ローンは借りられるのか」「借りられたとしても、いくらまで可能なのか」と気になる方も多いでしょう。
そこで今回は、年収400万円の場合に借りられる住宅ローンの金額・住宅ローンを借りる際のポイント・住宅ローンの審査を通過するコツを詳しく紹介しています。借入金額が希望金額よりも低い場合の対処法についても説明しているため、住宅を購入したいと考えている年収400万円前後の方はぜひ参考にしてください。
目次
1.年収400万円以下でも住宅ローンは借り入れできる?
年収400万円は手取り月収に換算すると約25万円前後であり、日本の給与所得者の平均値よりもやや低いため、「住宅ローンを借りられないのでは」と不安になる方も少なくありません。
しかし、住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」によると、2013年から2022年度においておよそ20%の利用者が年収400万円以下であることが分かっています。
出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
したがって、住宅ローンの借り入れは年収400万円以下でも十分に可能です。
1-1.年収400万円が無理せず払える借入金額は2,500万円
基本的に、住宅ローンは年収の5~7倍が理想とされています。年収400万円の方が無理なく返済できる住宅ローン借入額は「約2,500万円」で、この借入目安を超えると総返済負担額が高まって家計を圧迫する可能性があるため注意が必要です。
【総返済負担率の平均値】
総返済負担率 | 返済負担率の割合 |
---|---|
10%未満 | 4.5% |
10~15%未満 | 10.6% |
15~20%未満 | 18.4% |
20~25%未満 | 22.4% |
25~30%未満 | 27.5% |
30%以上 | 16.6% |
平均 | 23.1% |
出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
実際のフラット35利用者における総返済負担率のボリュームゾーンは25~30%未満ですが、年収の高低を問わず「25%以下」に抑えることが望ましいとされています。30%・35%以上で返済する場合は、家計に大きな負担がかかりやすくなることも覚えておきましょう。
下記は、借入金額別・返済期間別の月返済額を示した表です。
【月々返済金額のシミュレーション】
借入金額 | 25年返済 | 30年返済 | 35年返済 |
---|---|---|---|
2,000万円 | 82,837円 | 71,939円 | 64,218円 |
2,500万円 | 103,546円 | 89,924円 | 80,272円 |
3,000万円 | 124,255円 | 107,909円 | 96,327円 |
3,500万円 | 144,964円 | 125,894円 | 112,381円 |
※金利は年1.8%、全期間固定金利で元利均等返済を前提として計算
2,500万円の住宅ローンを35年で返済する場合、月々の返済金額は約8万円と、家計を圧迫するリスクの少ない額となります。しかし、同じく35年返済で3,500万円の住宅ローンを借りた場合の月々返済金額は約11万円です。月収25万円前後と考えると、返済は不可能ではないものの現実的ではありません。
また、年収400万円の場合における返済負担率(返済比率)別の月々の住宅ローン返済額は、下記の通りとなっています。
【年収400万円の場合の返済負担率別月々返済額】
総返済負担率 | 月々の返済金額 | 返済後の残金※ |
---|---|---|
15% | 5万円 | 約21.7万円 |
20% | 約6.7万円 | 約20万円 |
25% | 約8.3万円 | 約18.4万円 |
30% | 10万円 | 約16.7万円 |
35% | 約11.7万円 | 約15万円 |
※手取り年収320万円・毎月の平均収入額26.7万円で計算
総返済負担率が30%未満の場合、月々の返済金額は10万円以下です。返済後も約20万円前後が残るため、人によっては無理なく貯金までできるでしょう。
生活費や貯金などの固定費を考えると、ゆとりある返済が可能な住宅ローンの借入上限額は2,500万円、ほかに支払うものが多く少しでも余裕が欲しい場合は2,000万円が無難です。
1-2.一般的な住宅ローンの借り入れ金額
年収400万円の方が、フラット35を利用して固定金利1.8%・元利均等方法で返済するケースにおいて、その他の借入金額がゼロの場合の借入限度額は「3,633万円」です。しかし、実際は金利変動や住宅ローン以外の借金によって返済可能額・借入限度額は低下します。
購入する住宅の種類 | 平均年収倍率 | 年収400万円の場合の借入金額 |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 7.7倍 | 3,080万円 |
マンション | 7.2倍 | 2,880万円 |
建売住宅 | 6.9倍 | 2,760万円 |
注文住宅 | 6.9倍 | 2,760万円 |
中古マンション | 5.9倍 | 2,360万円 |
中古戸建 | 5.7倍 | 2,280万円 |
出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
上記は、住宅種類ごとの一般的な年収倍率と年収400万円の場合の借入金額を示した表です。土地付注文住宅における平均年収倍率は7.7倍で、年収400万円の場合の借入金額は3,080万円である一方、中古戸建の平均年収倍率は5.7倍、借入金額は800万円低い2,280万円となっています。
このように、借入可能額の限度ギリギリまで住宅ローンを借りるケースは少ないこと・住宅の種類によっても借入額は大きく異なることも覚えておきましょう。
1-3.平均的な住宅ローンの返済期間
住宅の種類ごとにおける住宅ローンの平均返済期間は、下記の通りです。
購入する住宅の種類 | 平均的な返済期間 |
---|---|
注文住宅(建築)※1 | 32.8年 |
注文住宅(土地)※2 | 34.5年 |
分譲戸建住宅 | 32.7年 |
分譲集合住宅 | 29.7年 |
既存(中古)戸建住宅 | 28.4年 |
既存(中古)集合住宅 | 28.5年 |
※1 住宅建築における借入金の返済期間
※2 土地購入における借入金の返済期間
注文住宅や新築の分譲戸建住宅は基本的に購入価格も高いため、住宅ローン返済期間も30年以上と長期間となる傾向です。一方で、新築の分譲集合住宅や中古物件(戸建・集合住宅)の平均的な返済期間は30年未満と、多くの方が早い段階で住宅ローンを完済していることが分かります。
たとえ35年返済で住宅ローンを借りても、資金に余裕が生まれた際は繰り上げ返済も可能です。繰り上げ返済は金利の節約も期待できるため、資金の余裕度に応じて段階的に行うと良いでしょう。
1-4.住宅購入に必要な費用
購入する住宅の種類によって、必要となる費用は大きく異なります。下記は、住宅の種類ごとにおける平均的な購入費用と融資金額です。
購入する住宅の種類 | 平均的な購入に必要な金額※ | 平均的な融資金額 |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 4,694万円 | 4,018万円 |
マンション | 4,848万円 | 3,692万円 |
建売住宅 | 3,719万円 | 3,185万円 |
注文住宅 | 3,717万円 | 2,967万円 |
中古マンション | 3,157万円 | 2,509万円 |
中古戸建 | 2,704万円 | 2,256万円 |
出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
※注文住宅については予定建設費と土地取得費を合計した金額、新築住宅及び中古住宅の購入については購入価額
新築マンションの購入費用は土地付注文住宅と比較して高い一方で、平均的な融資金額は土地付注文住宅よりも少ないことが特徴です。
また、その他の住宅種別においても購入費用のすべてを借り入れた住宅ローンでまかなうケース(フルローン)は少ないことが分かります。2022年度の場合、頭金の平均額は注文住宅が約450万円、建売住宅は約320万円、マンションは約990万円程度の自己資金を投入しています。
分譲住宅の諸費用について|購入前に発生する手付金など詳しく解説
2.年収400万円の方が住宅ローンを借りる場合のポイント
年収400万円の場合、生活費や貯金などの最低限必要な支出額を抜くと自由に使えるお金はごくわずかとなります。そのため、住宅ローンを借りる際は「家計負担」と「住宅ローン返済」のバランスが特に重要と言っても過言ではありません。
ここからは、年収400万円の方が住宅ローンを借りる際におさえておくべきポイントを5つ紹介します。
2-1.金利タイプは自分に合ったものを選ぶ
住宅ローンの金利タイプには、主に「変動金利型」「全期間固定金利型」「固定金利選択型」の3つがあります。
変動金利型 | |
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金融情勢の変化に伴い定期的に金利が変動するタイプです。金利の見直しは、通常半年に1回・年に2回行われます。 | |
メリット |
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デメリット |
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全期間固定金利型 | |
---|---|
借入期間中の金利が固定されるタイプです。金利の変動がないため、契約時点で総返済額が確定します。 | |
メリット |
|
デメリット |
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固定金利選択型 | |
---|---|
借入当初から一定期間中(2年~15年)の金利が固定されるタイプです。期間終了後は、変動金利型や再度固定金利選択型を選べます。 | |
メリット |
|
デメリット |
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住宅ローン利用者調査によると、年収400万円以下の方は固定期間選択型を選ぶ傾向にあり、変動金利型は少ない傾向にあることが分かります。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)」
いずれのタイプにおいてもメリット・デメリットがあるため、自身の理想とする返済計画を明確にすることはもちろん、今後の人生プランも考慮した上で適切な金利タイプを選ぶと良いでしょう。
住宅ローンの種類と金利タイプの詳細はこちらを参照ください。
2-2.借入期間と月々の支払いバランスを考える
住宅ローンは、借入期間が長くなるほど毎月の返済金額が小さくなる一方で、その分金利が発生するため合計の返済額は大きくなります。
下記は、2,000万~3,500万円の住宅ローンを借りた場合における、借入期間ごとの合計返済金額を示した表です。
【合計返済金額のシミュレーション※】
借入金額 | 25年返済 | 30年返済 | 35年返済 |
---|---|---|---|
2,000万円 | 約2,485万円 | 約2,590万円 | 約2,697万円 |
2,500万円 | 約3,106万円 | 約3,237万円 | 約3,371万円 |
3,000万円 | 約3,728万円 | 約3,885万円 | 約4,046万円 |
3,500万円 | 約4,349万円 | 約4,532万円 | 約4,720万円 |
※金利は年1.8%、全期間固定金利で元利均等返済を前提として計算
このように、25年返済と35年返済とでは、返済総額に数百万円の違いが生じます。借入金額が大きければ大きいほど差額が広がりやすいことも特徴です。
住宅ローンを借りるときは、借入期間と月々の支払いバランスを考慮した上で適切な返済プランを選択しましょう。
2-3.ライフプランを織り込んだ返済計画を立てる
住宅ローンを借りるときは、ライフプランを織り込んだ返済計画を立てることも忘れてはなりません。ライフプランとは、今後の人生において、いつのタイミングでどのようなライフイベントが起こるのかを考え、経済面も含めて具体的に立てる生活設計・人生計画のことです。
住宅ローンの返済期間中は、結婚や子どもの出産・進学のほか、家族のけが・病気、転職・独立など、さまざまなライフイベントが発生します。子どもが進学するときは教育資金、自身が独立するときは開業資金など、各ライフイベントにはまとまった出費も伴うでしょう。
そのため、住宅ローンを借りるときは「現在の年収で無理なく住宅ローンを返済できるか」だけでなく、「何年後にどのようなライフイベントが生じて、どれくらいのお金が必要となるか」も考えた上で、より現実味を帯びた返済計画を立てることが大切です。
2-4.住宅ローン以外にかかるコストも意識する
住宅購入においては、土地・物件価格以外にもさまざまな諸費用が必要です。例としては、下記が挙げられます。
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 不動産仲介手数料
- 火災保険料
- 登記手数料 など
これらの諸費用は、基本的に物件価格の約5~10%を占めます。例えば、物件価格が3,000万円の場合は、150万~300万円程度が必要です。また、諸費用の支払いタイミングは項目によっても異なるうえ、確実に諸費用込みで住宅ローンを借りられるわけではありません。
住宅ローンの頭金にしようと考えていた自己資金額から捻出しなければならないケースも考えられるため、あらかじめ住宅ローン以外にかかるコストを意識した上で借入額を決定しましょう。
上記の住宅購入にかかる諸費用の詳細はこちらを参照ください。
2-5.住宅ローン減税制度を活用する
年収400万円の方が住宅ローンの返済負担をできる限り抑えるためには、住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)の活用もおすすめです。住宅ローン減税制度とは、毎年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除される制度であり、「住宅ローン控除」とも呼ばれています。
本来、住宅ローン減税制度は2021年をもって終了予定でしたが、2022年の税制改正によって2025年まで4年間の延長が決定しました。
住宅ローン控除を受けられる期間は原則「10年」であり、特例措置が適用された場合は「13年」となります。なお、住宅ローン控除を受けるためには、2025年末までに物件を取得し、入居しなければならないことにも注意が必要です。
土地探しから実際に物件を取得し入居するまでの期間は、基本的に1年半程度となっています。住宅ローン減税を受けたい場合は、なるべく早い段階で入居できるよう、不動産会社と相談しながらスケジュールを調整することがおすすめです。
住宅ローン減税についての詳細はこちらを参照ください。
3.年収400万円の方が住宅ローンの審査を通過するコツ
年収400万円の方でも住宅ローンを借りることは十分に可能ですが、数千万円という多額の住宅ローンを借りる際は、数十万~数百万円程度の一般的な借金と比較して、ローン審査が一層厳格になることに注意が必要です。
住宅ローンの審査は申込者の年収の高さではなく、総合的な返済能力で決まります。総合的な返済能力は、申込者の勤務先や勤続年数、雇用形態、さらに年齢などで判断されます。
住宅ローン審査に問題なく通る方もいれば、何らかの理由で審査落ちしてしまう方がいることも実情です。特に、以下の3点が審査落ちの主な理由として挙げられます。
完済時点の年齢が80歳を超えている |
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基本的に住宅ローン商品を扱う金融機関では、「80歳までに完済できるか」を審査基準としているため、完済時年齢が80歳を超えていた場合は審査落ちの可能性が高まります。 |
返済実績がない(スーパーホワイト) |
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過去にクレジットカードの利用やローンの借入経験がない方は、「スーパーホワイト」と呼ばれます。個人信用情報における記録が一切ないスーパーホワイトは、「返済実績がない」とみなされます。つまり、信用情報を正確に判断する要素がないこととなるため、住宅ローン審査においてはむしろ不利になると言えるでしょう。 |
健康問題がある |
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基本的に金融機関では、住宅ローン契約時の団信(団体信用生命保険)加入を必須としています。病気の治療歴があったり持病があったりする場合、団信への加入時には告知書に記載しなければなりません。また、返済能力に影響する何らかの健康問題がある方は、団信に加入できない可能性もあります。団信に加入できなければ住宅ローン契約の条件を満たせないこととなるため、結果的に審査落ちしてしまいます。 |
4.借入できる金額が希望金額より低い場合の対処法
安定して返済できる住宅ローンの借入金額が分かっても、「取得したい住宅の金額に届かない」というケースも珍しくありません。
最後に、無理のない借入希望額が住宅費用より低い場合の対処法を2つ紹介します。理想のマイホーム購入と無理なく返済できる住宅ローン借入を両立させたい方は、以下の方法を検討してください。
4-1.頭金を用意する
無理なく借り入れられる住宅ローンが取得したい住宅の金額に届かない場合、最もシンプルな対処法は頭金を用意することです。
頭金とは、住宅の購入時に代金の一部として充当するお金のことです。例えば無理なく仮入れられる住宅ローンが2,000万円で、取得したい住宅の金額が2,500万円だった場合、500万円の頭金を支払えば希望通り2,000万円の住宅ローンで購入できるようになります。
頭金をどれくらい用意するかは、人によって大きく異なります。100万円前後のケースもあれば、1,000万円程度のケースもあります。自己資金の全額を頭金に投入すると、その他発生する諸費用などをまかなえなくなる可能性もあるため、よく考えた上で適切な頭金の額を決定しましょう。
4-2.収入合算を利用する
「夫婦いずれも働いており、夫名義で住宅ローンを申し込もうとしていたが、購入したい住宅価格に無理なく借り入れられる住宅ローンの額が届かなかった」という場合は、収入合算を利用することも一案です。
収入合算とは、住宅ローン契約は1本(名義人1人)のまま、同居する夫婦・親子の収入を合算して住宅ローンを借りる方法です。名義人1人の収入に、名義人と同居する配偶者や親など2人目の収入も合算されるため、借り入れられる住宅ローンの額を増やせます。
なお、収入合算と似た借入方法に「ペアローン」があります。ペアローンとは、2本の住宅ローン契約、つまり同居する夫婦や親子の2人の名義で住宅ローンを借りる方法です。別々に住宅ローンを借りることとなるため、いずれも団信契約が必要である一方、それぞれが住宅ローン控除を受けられます。
収入合算で合算できる収入に関しては、金融機関ごとに細かな規定があります。合算対象者の収入すべてを合算できるケースもあれば、契約者または合算対象者の50%までしか合算できないというケースもあるため、収入合算を利用したい場合はあらかじめ金融機関ごとの規定を確認しておきましょう。
まとめ
住宅ローンの借り入れは年収400万円程度でも十分に可能であり、実際にフラット35利用者のおよそ20%は年収400万円以下となっています。
年収400万円の方にとって、家計を圧迫しない程度の住宅ローン借入額は約2,500万円ですが、本当に無理なく返済できるかどうかは返済期間や金利タイプ、さらにライフプランやその他の借金状況によっても大きく異なることも覚えておきましょう。
家計を圧迫せず安定して住宅ローンを返済していきたいのであれば、住宅購入時にできる限り多くの頭金を投入したり、収入合算を利用したりすることがおすすめです。しかし、これらの方法にも少なからずリスクが伴うため、知識のある不動産会社やFPなどに相談しつつ自分たちにとって最適な方法を選択するとよいでしょう。
アイダ設計では住宅ローンの相談も承っております。