注文住宅の費用相場はどのくらい?予算ごとの家の違いや注意点を解説
注文住宅の費用相場は、建てる場所や仕様、さらには各種オプションにより大きく異なります。注文住宅を考える際には、総額だけでなく細かい内訳を把握することが大切です。住宅建築にかかるコストを理解し、理想のマイホームを手に入れるための知識を身につけましょう。
当記事では、予算ごとの家の違いや、費用を抑えるためのポイントなどについて解説します。注文住宅の計画を始める前に、この記事を参考にして、しっかりとした資金計画を立ててください。
目次
1.注文住宅の費用相場は?何にお金がかかる?
注文住宅は、建物の大きさや間取りのほか、建てる土地などのいくつかの要素によって価格が変動します。住宅ローンといった諸費用部分でもお金の考慮が必要になるため、事前に費用相場を把握し、資金計画に役立てましょう。
注文住宅で家を建てる際に発生する費用は、以下の3つに大別されます。
1-1.土地購入時の内訳
住宅を建てる所有地がない場合は、土地の購入が必要です。土地の購入では主に、手付金や印紙代、所有権移転登記にかかる費用のほか、登記の手続きを司法書士に依頼した場合は報酬の支払いも発生します。不動産会社を通じて土地を購入する場合は、仲介手数料の支払いも必要です。
国土交通省の調査によると、令和4年度の土地購入資金の全国平均は1,819万円です。三大都市圏は平均で2,626万円と、全国平均よりも上回る結果です。
なお、土地の購入自体に消費税はかかりません。しかし、司法書士への報酬や不動産会社への仲介手数料には消費税がかかることを覚えておきましょう。
1-2.住宅建築時の内訳
住宅の建築に関する面では、工事の種類によって建築資金が異なります。国土交通省による令和4年度の調査では、新築世帯は3,866万円、建て替え世帯は4,487万円という結果です。
住宅建築では、工事契約金や建築確認申請費、着工金のほか、場合によっては地鎮祭費用などが発生します。
また、建物本体工事費用の内訳として挙げられるのは、主に下記のような項目です。
- 設計費
- 仮設工事費用
- 基礎工事費用
- 内装・外装工事費用
- 設備設置費用
建築に欠かせない足場の組み立てやトイレなどの仮設工事にも、費用が発生することを把握しましょう。くわえて、建物構造に関わる基礎工事や内外装工事のほか、エアコンなどの設備設置にも費用がかかります。
1-3.住宅ローンの頭金
注文住宅を建てる際の費用の1つに、住宅ローンの頭金も含まれます。頭金を用意することで住宅ローン審査に通りやすくなり、後の返済負担を軽減できます。
住宅購入における令和4年度の自己資金比率は以下の通りです。
土地を購入した注文住宅新築世帯 | 30.6% |
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建て替え世帯 | 46.7% |
分譲戸建住宅取得世帯 | 27.5% |
分譲集合住宅取得世帯 | 42.8% |
既存(中古)戸建住宅取得世帯 | 42.9% |
既存(中古)集合住宅取得世帯 | 49.3% |
リフォーム住宅世帯 | 74.1% |
一般的に、頭金として住宅資金全体の20%以上を準備するのが望ましいとされています。ただし、住宅の建築以外の出費で困らないよう、子どもの教育費や生活費なども考慮して頭金の額を検討することが大切です。
2.かける予算ごとの注文住宅の特徴や違い
注文住宅は建売住宅とは異なり、建てる人の希望に合わせて家の仕様を決められます。標準仕様やオプション設備などを好みに合わせられる魅力がありますが、予算によって建てられる住宅の特徴が異なる点に注意しましょう。
ここでは、予算ごとでどのような注文住宅が建てられるのか紹介します。予算は建物価格のみの計算として参考にしてください。
2-1.1,000万円台の注文住宅
1,000万円台の注文住宅は多くの場合、建築費や材料費などを抑えたシンプルな家が特徴です。
例えば、住宅の形は真上から見たときに凹凸が少ない正方形や長方形など、四角形の設計になる傾向があります。四角形の住宅であれば、床面積や外壁の面積が大きくなりすぎず、材料費・足場代金を抑えて設計できるのが理由です。内装も凝ったものではなく、シンプルな間取りや比較的安価な素材を用いたデザインが採用されます。低価格を重視した設計となりますが、耐震性などの面は優先して確保されるため安心です。
ハウスメーカーによっては、1,000万円以内で住宅を建てることも可能です。下記リンクでは、1,000万円以内の建築プランの例を紹介しているため、参考にしてみてください。
2-2.2,000万円台の注文住宅
2,000万円台は、全国の平均的な建築費用よりも低い予算に分類される価格帯です。設計に関するすべての希望をかなえるのは難しい面がある一方、工夫次第で理想の住宅に近づけられます。
例えば、外観をシンプルにし、内装にグレードの高い素材や設備を用いる方法が挙げられます。内装全体ではなくてもグレードが高いキッチン設備を選ぶなど、部分的に日々の生活向上に直結するような選択が可能です。反対に内装はシンプルにして、外壁にタイルを使ったりバルコニーを設置したりするのもよいでしょう。
予算2,000万円台で希望の住宅に近づけるには、上記のように優先順位に沿った設計で予算配分するのがポイントです。譲れない部分や、将来を見越して設置したい設備などを考慮して優先順位を決め、設計に反映させましょう。
2-3.3,000万円台の注文住宅
3,000万円台は、注文住宅にかけられる平均的な建築費用に分類される価格帯です。1,000万~2,000万円台と異なり、自分の希望を反映させやすくなります。
例えば、住宅の形は正方形や長方形ではなく、敷地に合わせた設計が可能です。いびつな形や狭い場所でも、敷地を有効活用して住宅を建てられます。
基準より高い性能をもつ設備や素材を導入しやすくなるのも、3,000万円台の特徴です。キッチンやトイレ、浴室といった水回りなど、生活に欠かせない設備を幅広い範囲のグレードから選べます。自然素材を使用した内装や、床暖房の設置も検討しやすくなる価格帯です。構造面であれば耐震を意識して強化するなど、全体的な設計の自由度が高くなります。
2-4.4,000万円台の注文住宅
4,000万円台になれば、より多くの建築プランが実現可能です。敷地を有効活用した住宅の形にできるほか、外壁の面積が多くなり材料費がかかるような設計も検討しやすくなります。例えば「コ」の字型や、中庭がある「口」の字型などの形状です。
バルコニーや屋上を設置して、外観をより立体的に仕上げるのも選択しやすくなります。吹き抜けといった、工事の手間・コストや日数を要するような設計を選びやすいのも特徴の1つです。
上記のように4,000万円台は、住宅そのものの形から内装に至るまで、多くの希望が実現しやすい利点があります。こだわりを反映しやすく、オリジナリティの高い住宅の建築を目指せる価格帯です。
3.注文住宅にかかる費用を抑えるポイント
注文住宅は、自分の希望をかなえることを優先させたり設計にこだわりすぎたりすると、想定よりも費用が多くかかってしまう可能性があるため注意が必要です。
注文住宅の費用を抑えるには、次の6つのポイントを意識してください。
3-1.予算をかける部分に優先順位を付ける
自分の希望を詰め込んだ住宅を建てようとすると、大幅に予算を超える可能性があります。費用を抑えるには、予算をかける部分に優先順位を付けて設計するのがポイントです。間取りや設備のほか使用する素材など、将来的な家族構成・ライフスタイルを見越して優先順位を決めましょう。
後々のメンテナンスで交換できる部分は、建築時に安価なものを選ぶのも1つの方法です。例えば、壁紙は一般的に5年~10年で張り替えが必要と言われています。建築時は安価な素材で対応し、断熱などを優先するのもおすすめです。キッチンなどの生活に欠かせない設備も、まずはグレードの低い製品を設置します。その後、劣化した時などに高性能や最新式の製品へ交換する計画にしておくと、建築時にコストを抑えるのに役立ちます。
3-2.シンプルな間取りにする
壁が多い住宅ほど使用する建材が増え、その分費用が高くなります。費用を抑えるには間仕切りやドアの数が少なくなる、シンプルな間取りにするのもポイントです。
シンプルな間取りにするには部屋の数を減らすほかに、階段をリビング内に設ける方法があります。階段につながる廊下や間仕切りが不要となり、建材にかかる費用を抑えられるのにくわえ、家族が顔を合わせる機会も増やせる間取りです。
収納スペースを各部屋に作らないように設計にするのも、間仕切りを減らすのに役立ちます。建築時にウォークインクローゼットなどを作っておき、後に収納が足りなくなった場合には、収納家具を設置して対応するとよいでしょう。
3-3.凹凸の少ない外観にする
凹凸が少なくシンプルな外観にすると、建築費用を抑えられるためおすすめです。反対に凹凸が多い形にすると、外壁だけではなく屋根部分も含めて複雑となります。多くの建材が必要となるのにくわえ、その分工事日数を要し人件費などもかかるので注意しましょう。
予算を抑えて広さを確保したい場合は、1階と2階を同じ形に設計する方法があります。凹凸が少ない外観に仕上げながら、可能な限りの広さを得られる設計です。四角形に近い形にすると安定性が生まれ、耐震性の確保にもつなげられます。
3-4.水回り設備を1か所にまとめる
1階に浴室とトイレを設置し、2階にキッチンを配置するような設計にすると、住宅内で水回り設備が分散してしまい、工事が複雑化します。排水管の設置工事が複雑になり費用が高くなるため、水回り設備は1か所にまとめる設計にしましょう。ワンフロアにまとめて、水回り設備全体をなるべく近づけて配置すると、より費用を抑えられます。
水回り設備が1か所にまとまっていると、スムーズな家事動線にもつなげられます。特にキッチンや浴室・洗面所は、炊事や洗濯、手洗いなどで1日にかけて利用する機会が多い場所です。コンパクトな範囲で利用できるように配置すると無駄な移動が少なくなり、効率的に生活できる空間に近づけられます。
3-5.延べ床面積を小さくする
基本的に注文住宅の建築費用は、延べ床面積に坪単価をかけて算出されます。そのため、延べ床面積を小さくすることで費用軽減が見込めます。
延べ床面積を小さくするには、広すぎる部屋や無駄なスペースがないかなどを確認しながら、間取りを決めましょう。寝室が広すぎないか、家の規模に対して玄関スペースを取りすぎていないか、また廊下が長すぎないかなどを確認してください。
余分なスペースを削って間取りを決めるように意識すると、必要な広さを確保した上でコンパクトな住宅を設計でき、延べ床面積を小さくすることにつなげられます。
3-6.土地の予算を減らす
土地は同じ面積でも都市部や地方などのエリアの違いによって、価格が大きく異なります。費用を抑えるには土地を探す範囲を広めに設定し、予算を減らすことを視野に入れましょう。
下記のような場所を選ぶと、土地の予算を減らせる可能性があります。
- 駅から離れた場所
- 北向きの土地
- 変形地
駅から離れている、または北向きで日当たりの確保が難しい場所の土地は、価格が低くなる傾向があります。また、変形地とは、三角形などの多少利用しにくい土地を指しています。間取りが組みづらいため、比較的安価となる土地です。
それぞれマイナス面のある土地ですが、どちらも工夫次第で快適な住宅設計を目指せます。設計に関してはハウスメーカーなどに相談し、土地の予算を調整することも考慮に入れましょう。
4.注文住宅の予算決め・見積もり確認する際の注意点
予算決めや見積もり確認は、注文住宅の建築契約前の重要な段階です。最終的な総額に直結する部分のため、どのような点に注意して確認するべきか事前に把握しましょう。
予算決め・見積もり確認で注意が必要なポイントは、以下の3つです。
4-1.経済的に無理のない範囲で予算を決める
注文住宅の予算は、収入や住宅ローンといった経済的な面を考慮し、無理のない範囲の額に決めましょう。現在の経済状況と照らし合わせて、余裕のある予算決めをするのがポイントです。
余裕のある予算に設定しなければ、不測の事態が起きた際に住宅ローンの返済などが困難になるおそれがあります。結果的に住宅を手放すことになりかねないため、予算決めには注意が必要です。
また、予算を曖昧に設定すると、見積もり内容が適正かどうか判断しにくくなります。現在の経済状況や将来的な収入で、無理なく支払える範囲の設計か検討が難しくなるため、予算はなるべく具体的に決めてください。
4-2.予算を大幅に超えないようにする
注文住宅は間取りなどの面で自分の希望を反映させやすく、設計に関して比較的自由度が高い住宅の購入方法です。自分の希望をかなえようとしたり、オプションを追加しすぎたりすると、予算を超えてしまう可能性があるため注意しましょう。オプションを追加するたびにいくら加算されるのか、都度確認するのが大切です。
ハウスメーカーによっては、電気・水道・ガスなどの生活に欠かせない項目の工事が、オプション扱いになっているケースがゼロではありません。オプションは見積もりに含まれず追加工事の扱いとなり、別途費用が発生する可能性も考えられます。予算を超える原因となりかねないため、見積もり書を受け取った際はどの項目がオプション扱いになっているか、内容をしっかりと確認してください。
4-3.見積もり金額と内容を確認する
見積もり書は、金額と内容を照らし合わせながら確認することが大切です。特に下記の点は、より注意して確認してください。
・希望が反映されているか
間取りや設備など、設計に関する譲れない希望が反映された上で、金額が算出されているか確認が必要です。抜けている希望がある場合は、なぜ反映されていないのか担当者に説明を求めてください。設計上、希望を反映できない場合もありますが、単純に忘れられている可能性も考えられます。
・整合性が取れているか
金額に対して、相応の工事内容や設備設計となっているか確認しましょう。素材や品質などの詳細も把握するように意識してください。
見積もり書で気になる部分があれば担当者に確認するのが重要です。不明点や疑問点を解消してから契約すると、安心して建築を任せられるでしょう。
5.注文住宅の費用を抑えたいなら補助金制度も検討しよう
注文住宅を建てる際に、下記に挙げるような国や各自治体が実施する補助金や助成金、減税制度を利用すると、建築費用を抑えられる場合があります。
・住宅省エネ2024キャンペーン
カーボンニュートラルの実現に向けた住宅の省エネ強化を目的に、リフォームなどを支援する4つの補助金事業の総称です。若者夫婦世帯を対象に、長期優良住宅であれば1住戸につき100万円の補助が受けられるキャンペーンなどが実施されています。
・新築した場合の減税制度
新築した場合は、住宅ローン減税や登記で発生する税率の軽減が適用される制度などを利用可能です。住宅ローン減税であれば最長13年間、1年あたり最大35万円の控除が受けられる可能性があります。
いずれの制度も一定の条件を満たす必要があったり、申請期間や予算が決まっていたりする点に注意してください。各制度の詳細を確認した上で、申請を検討しましょう。
まとめ
注文住宅は、自分の希望を反映させた理想の住まいを手に入れることができますが、その費用は多岐にわたります。土地購入費や建築費、住宅ローンの頭金など、さまざまな費用がかかるため、しっかりとした資金計画が必要です。
また、予算に応じた家の特徴や、費用を抑えるためのポイントも押さえておくとよいでしょう。補助金制度も活用し、経済的に無理のない範囲での計画を立てて、満足のいく注文住宅を建てるための参考にしてください。