3000万円の住宅ローンが組める年収はいくら?返済額の目安を解説
住宅を購入する際、一般的には住宅ローンを利用します。しかし、高額を借り入れるとなると、不安に感じることもあるのではないでしょうか。住宅ローンの審査に通った後は、長期にわたって返済し続けなくてはなりません。申し込みする前から計画を立てて、無理なく返済していくことが大切です。
当記事では、3000万円の住宅ローンを組むためには年収いくら必要なのかという点や、年収別の返済額、返済負担を抑えるコツを解説します。
目次
1. 3000万円の住宅ローンが組めるのは年収いくら?
戸建て住宅やマンションを自宅として購入する方の中には、3000万円以上の住宅ローンを組むことを検討している方も多いでしょう。ここでは、3000万円の住宅ローンが組める年収の目安について解説します。返済負担が大きい年収・余裕を持って返済できる年収も併せて確認しましょう。
1-1. 3000万円の住宅ローンが組める年収の目安は400万円以上
3000万円の住宅ローンを組むために必要な年収を考える際には、「返済負担率」「年収倍率」の2つの要素を考慮することが大切です。
返済負担率とは、世帯年収に占める住宅ローンの年間返済額の合計の割合をパーセントで示した数値であり、「年間の返済額合計÷世帯年収×100」で求められます。住宅ローンを無理なく返済するためには、返済負担率が20~25%程度となるよう借入額を設定するとよいでしょう。
返済負担率から見る世帯年収の目安(3000万円の住宅ローンを組んだ場合)
変動金利0.5%の場合 | 固定金利1.5%の場合 | |
---|---|---|
毎月の返済額 | 7万7875円 | 9万1855円 |
年間返済額 | 約93万5000円 | 約110万2000円 |
返済負担率20%の場合の年収目安 | 約468万円 | 約551万円 |
返済負担率25%の場合の年収目安 | 約374万円 | 約441万円 |
また、年収倍率もローンの借入額を考える際の目安の1つです。年収倍率とは、住宅購入に必要な資金(自己資金+住宅ローンによる借入金)を年収で割った数値のことであり、「必要資金÷世帯年収」で求められます。「フラット35」を提供する住宅金融支援機構の調査では、2022年度における年収倍率は下記の通りとなっています。
住宅購入における年収倍率(2022年度)
住宅の種別 | 年収倍率 |
---|---|
土地付注文住宅 | 7.7倍 |
注文住宅 | 6.9倍 |
建売住宅 | 6.9倍 |
新築マンション | 7.2倍 |
中古戸建住宅 | 5.7倍 |
中古マンション | 5.9倍 |
出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
年収倍率を考慮すると、3000万円の建売住宅を購入する場合の世帯年収の目安は、約435万円(3000万円÷6.9倍)となります。また、3500万円の土地付注文住宅を頭金500万円、住宅ローン3000万円で購入する場合は、約455万円(3500万円÷7.7倍)が目安となります。
以上のことから、返済負担率・年収倍率の両方を考慮すると、3000万円の住宅ローンを組める年収の目安は400万円以上であると考えられます。
1-2. 年収400万円以下だと返済負担が大きい
3000万円の住宅ローンを組む年収の目安は400万円以上と言われていますが、年収400万円以下の方が3000万円の住宅ローンを組めないわけではありません。
銀行など多くの金融機関では、返済負担率が30~35%程度に収まっているかを基準に住宅ローンの審査を行います。例えば、変動金利0.5%で3000万円の住宅ローンを組む場合、約312万円の年収がある方も住宅ローンの審査に通る可能性があります。
しかし、年収400万円以下の方が3000万円の住宅ローンを組んだ場合、返済負担が大きくなることに注意が必要です。
変動金利0.5%で3000万円の住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は約7万8000円です。額面年収350万円の場合、毎月の手取り収入は約22万~25万円であるため、住宅ローンを除く約18万~22万円から生活費や貯蓄を捻出する必要があります。月々の出費を考慮した上で、返済可能額を検討することが大切です。
1-3. 余裕を持って住宅ローンを組みたいなら年収500万円以上が理想
余裕を持って住宅ローンを組みたい場合は、住宅ローンの返済負担率を20%以内に抑えるとよいでしょう。3000万円の住宅ローンを組む場合、返済負担率20%となる年収は、変動金利0.5%では約468万円、固定金利1.5%では約551万円です。金利や返済期間にもよりますが、年収500万円以上であれば、ある程度の余裕を持って住宅ローンを組めるでしょう。
2. 年収別!3000万円の住宅ローンを組んだ場合の返済額
3000万円の住宅ローンを組んだ場合、毎月の返済額と返済比率はどのようになるのでしょうか。おおまかな金額・比率を年収別に見てみましょう。
【年収別】3000万円の住宅ローンを組んだ場合の毎月の返済額・返済比率
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収350万円 | 7万6229円 | 約26.1% |
年収400万円 | 7万6229円 | 約22.9% |
年収500万円 | 7万6229円 | 約18.3% |
年収600万円 | 7万6229円 | 約15.2% |
年収700万円 | 7万6229円 | 約13.1% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
ここでは、上記に示した年収ごとの月々の返済額と返済比率について詳しく解説します。
2-1. ケース1.年収350万円
年収350万円で3000万円の住宅ローンを組んだ場合、毎月の返済額と返済比率は下記のようになります。
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収350万円 | 7万6229円 | 約26.1% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
住宅ローン審査に通るケースはあるものの、返済比率は約26.1%とやや高めです。手取り月収(約22万~25万円)で考えると返済比率は30.7~34.8%となるため、住宅ローン返済の負担は大きいと言えるでしょう。
2-2. ケース2.年収400万円
年収400万円の場合、3000万円の住宅ローンにおける毎月の返済額と返済比率は下記の通りです。
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収400万円 | 7万6229円 | 約22.9% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
額面年収で考えると、返済比率は適正範囲内と言えます。しかし、手取り月収(約25万~28万円)で考えた場合、返済比率は26.9~30.5%とローン返済の負担がやや大きい傾向にあります。家計や今後の収入予定・ライフプランを考慮した上で、ローンの借入金額や返済プランを検討しましょう。
2-3. ケース3.年収500万円
年収500万円の方が3000万円の住宅ローンを組む場合、毎月の返済額・返済比率は次のようになります。
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収500万円 | 7万6229円 | 約18.3% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
年収500万円の場合の返済比率は約18.3%であり、手取り月収(約31万~35万円)で考えても21.5~24.4%と適正範囲内にあります。家族構成や家計の状況にもよりますが、3000万円の住宅ローンを組んでも、安定して返済できるでしょう。
2-4. ケース4.年収600万円
年収600万円の方の場合、手取り年収が450万~510万円となるため、3000万円の住宅ローンも無理なく返済できると考えられます。毎月の返済額と返済比率を見てみましょう。
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収600万円 | 7万6229円 | 約15.2% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
毎月のローン返済額は年収500万円までと同額ですが、返済比率は約15.2%と負担が比較的小さくなっています。手取り月収(約37万~43万円)で考えても17.9~20.3%となっているため、ある程度の余裕を持って返済できるでしょう。
2-5. ケース5.年収700万円
年収700万円の場合も、毎月の住宅ローン返済額は他の年収と変わりません。しかし、返済比率が小さくなるため、返済負担は小さい傾向があることを押さえておきましょう。
毎月の返済額 | 返済比率 | |
---|---|---|
年収700万円 | 7万6229円 | 約13.1% |
※元利均等返済・借入期間35年・変動金利0.375%・頭金およびボーナス返済なしの場合
年収700万円の場合の手取り年収は525~595万円ほどであり、手取り月収は約44万~50万円となっています。手取り月収で考えた場合の返済比率も15.4~17.4%と20%を下回っているため、3000万円の住宅ローンを組んでも余裕を持って返済できるでしょう。
3. 3000万円の住宅ローンの返済負担を抑えるコツは?
自身の年収や家計・ライフプランを考えたときに、3000万円の住宅ローンを組むことに不安を感じる方もいるでしょう。
ここでは、返済負担を少しでも軽減するために押さえておきたいポイントを6つ紹介します。ポイントを押さえた上で利用する住宅ローンや資金計画・返済計画を立て、無理のない返済を目指しましょう。
3-1. 頭金の割合を増やす
住宅ローンの返済負担を抑える方法の1つとして、頭金をより多く用意して自己資金の割合を増やし、ローンの借入額や毎月の返済額を減らすことが挙げられます。
例えば、3000万円の物件を頭金なしのフルローン(変動金利0.375%・返済期間35年)で購入する場合、毎月の返済額は7万6229円です。一方、500万円の頭金を用意した場合、借入額を2500万円にできるため、毎月の返済額を6万3524円に抑えられます。
また、一定の頭金を用意することで金利の優遇を受けられたり、住宅ローンの審査が通りやすくなったりするなどのメリットもあります。頭金の相場は、物件価格の10~20%と言われているため、無理のない範囲で検討してみましょう。
3-2. 低金利の住宅ローンを組む
住宅ローンには金利が設定されており、返済期間が同じ場合、金利が高いほど返済総額も高くなります。住宅ローンは借入額が大きいため、0.1%違うだけでも返済額に大きく影響することを押さえておきましょう。
住宅ローンの金利は、金融機関や商品によっても異なります。また、変動金利タイプは固定金利タイプよりも金利が低い傾向にありますが、返済期間中に金利が上昇する可能性もあります。金利上昇リスクを考慮した上で、ゆとりを持った返済計画を立てるようにしましょう。
3-3. 返済期間を長く設定する
毎月の返済額を抑えたい場合は、住宅ローンの返済期間を長く設定するのも1つの手段です。ローン申込時の年齢が70歳以上である場合は難しいものの、定年まで時間的な余裕のある20代~30代の方におすすめの方法です。
例えば、3000万円の住宅ローン(変動金利0.375%)を返済することを考えてみましょう。10年で返済する場合、毎月の返済額は25万4755円となりますが、35年で返済する場合、毎月の返済額は7万6229円となります。返済期間が長いほど返済比率が低くなり、毎月の返済負担を減らせます。
一方で、返済期間が長いほど利息も増えるため、返済総額が大きくなる点に注意が必要です。上記の条件の場合、10年で完済した場合の返済総額が約3057万円であるのに対し、35年で完済した場合の返済総額は約3202万円になります。返済総額も考慮した上で、返済期間の設定を検討しましょう。
3-4. ライフプランに応じた返済負担率に抑える
住宅ローンを組む前に、今後のライフプランを考えた上で、返済額がいくらであれば余裕を持って返済できるか考えることも大切です。結婚費用や出産・育児費用・教育資金・自動車の購入費用など、大きなライフイベントにおける大きな出費も考慮した上で、無理のない返済計画を立てるようにしましょう。
また、配偶者に一定の収入がある場合は、世帯主と配偶者で協力して組める「ペアローン」もおすすめです。ローン契約は夫名義と妻名義の2つとなりますが、それぞれに住宅ローン控除を受けられるため、税負担を抑えられます。また、それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できる点も大きな特徴と言えるでしょう。
3-5. 国の制度を利用する
マイホームを購入する方に向けて、国はさまざまな税制優遇や給付金制度を用意しています。代表的な制度として下記のようなものがあるため、住宅購入の際には積極的に活用しましょう。
住宅購入で利用できる代表的な制度
制度 | 概要 |
---|---|
住宅ローン減税 | 住宅ローンを利用して住宅を取得する場合、ローン残高または住宅取得対価のうち少ないほうの金額の1%について、所得税の税額控除を受けられる |
住宅取得資金贈与の特例 | 両親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の金額まで贈与税が非課税となる |
子育てエコホーム支援事業 | 子育て世帯や若者夫婦世帯が条件を満たした住宅を取得した場合、1戸あたり80万円または100万円の補助金を受け取れる |
国の制度を利用する場合は、住宅性能などの条件を十分に確認した上で申請しましょう。募集期間が限定されていたり、予算上限に達し次第受付が終了したりする場合があることにも注意が必要です。また、自治体も独自の補助制度・支援制度を設けている場合があります。購入予定の住宅がある自治体の情報を事前に確認しておくとよいでしょう。
3-6. 繰り上げ返済を活用する
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に、元金の一部または全額を前倒しして支払いを行う返済方法を指します。住宅ローンの残債を減らすことで利息負担を軽減できるため、お金に余裕が出たタイミングで繰り上げ返済を検討してみましょう。
なお、繰り上げ返済には「返済額軽減型」「返済期間短縮型」の2つのパターンがあります。毎月の返済額を抑えたい方は返済額軽減型を、利息負担の軽減効果を大きくしたい方は返済期間短縮型を選ぶとよいでしょう。
4. 住宅ローンを組む際は金利タイプを考えることも大切
住宅ローンを組む際には、金利タイプを考えることも大切です。住宅ローンの金利タイプには「全期間金利固定型」「固定金利期間選択型」「変動金利型」の3タイプがあるため、自分に合った金利タイプを選びましょう。ここでは、これら3つの金利タイプについて詳しく解説します。
4-1. 全期間固定金利型
全期間固定金利型とは、住宅ローン契約時に決定した金利が、返済期間の全体を通して変わらない金利タイプのことです。
全期間固定金利型の場合、毎月の返済金額が固定されているため、返済計画が立てやすいというメリットがあります。返済期間中に市場金利が上昇しても途中で適用金利が上がることはなく、金利負担も上がらないので、安定して返済できるのもポイントです。
ただし、全期間固定金利型は変動金利型と比べ、契約時の金利がやや高い傾向があります。金利が低い時期にローンを契約する場合や、短期間での返済を考えている場合は、変動金利型のほうが有利になるケースもあることに留意しましょう。
4-2. 固定金利期間選択型
固定金利期間選択型とは、住宅ローン契約後の一定期間は固定金利が適用され、期間経過後に金利タイプを選択し直す仕組みを指します。
固定金利期間は3年・5年・10年・20年など選択することが可能であり、この期間中に金利が上昇しても返済額には影響しません。しかし、金利の固定期間終了後は金利上昇のリスクを考える必要がある点に注意が必要です。返済初期には返済額の安定を求めるものの、将来的に金利が低下することを期待している方におすすめの金利タイプと言えるでしょう。
4-3. 変動金利型
変動金利型とは、住宅ローンの金利が市場金利に合わせて変動する金利タイプを指します。変動金利型の金利は固定金利型よりも低い傾向があるため、短期での返済を考えている方や、長期的な低金利を見込んでいる方には向いていると言えるでしょう。
ただし、変動金利型の金利は、経済情勢や金融政策などに応じて半年ごとに見直されるので、ローンの契約時点で返済総額を確定できません。返済期間中に市場金利が上昇すると、返済負担が大きくなる恐れがあるため、金利動向を十分に確認することが大切です。
金利について詳しくはコチラ
まとめ
3000万円の住宅ローンが組める年収の目安は400万円以上であり、500万円以上あれば余裕を持って返済できるでしょう。年収400万円以下でも3000万円の住宅ローンを組めないわけではありませんが、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。
3000万円の住宅ローンを組むにあたって、できるだけ返済負担を抑えたい場合は、頭金の割合を増やしたり低金利の住宅ローンを選択したりといった対策方法があります。他にも、金利タイプによって返済額が変わってくるため、事前にしっかりと情報収集し、資金計画・返済計画を立てるようにしましょう。